研究課題
高齢がん患者は、加齢に伴う臓器機能や身体機能、認知機能の低下に加え、併存疾患や社会・経済的な問題など多様で複雑な背景を有しており、非高齢がん患者と同様の治療戦略を取ることが困難な場合も多い。しかしながら、現在確立されている標準治療のエビデンスは非高齢者を対象とした臨床試験から得られており、高齢がん患者に対する治療方針選択におけるエビデンスは極めて乏しい。本研究では治療前の臨床データ、Radiomicsの手法を用いて得られた画像データの特徴量、治療情報と治療後の有害事象および治療効果データを機械学習させ、個々の高齢がん患者に対して最適な治療方針を予測するシステムの開発を行うことを目的としている。本年度は正常臓器を含めたradiomics解析を行い、予後予測モデルを作成した。正常臓器としてはサルコペニアと呼吸機能を反映する骨格筋および肺を解析対象に加えた。Clinical modelに加え、4種類のRadiomics model(腫瘍、筋肉、筋肉/肺、筋肉/肺/腫瘍)を作成した。その結果、腫瘍領域、骨格筋、肺全てを含めたRadiomics modelで最も高い予測精度を示した。以上より、高齢者においては予後予測モデル作成の際に、正常臓器を解析に加えることの重要性が示唆された。また、Clinical modelとして選別された因子がStageのみであり、治療内容(化学療法併用の有無、照射範囲など)が因子として選別されなかったことから、患者背景、腫瘍背景に応じた治療方針が選択されている可能性が示唆された。現在、頭頸部癌においても同様にモデル構築中である。
3: やや遅れている
食道癌については正常組織を含めたモデルが作成できており、概ね順調に進捗している。頭頸部癌では収集すべきデータが多く、進捗がやや遅れている。現在、モデル構築作業中である。
頭頸部癌については、原発部位が多岐にわたりその進展形式や予後が異なることから、症例数の多い中咽頭癌と下咽頭癌に絞ってそれぞれモデル構築を行う方針とした。上述の通り、Clinical modelとして選別された因子がStageのみであり、治療内容(化学療法併用の有無、照射範囲など)が因子として選別されなかったことから、患者背景、腫瘍背景に応じた治療方針が選択されている可能性が示唆された。この点については、G8スクリーニングツールを用いた解析を進める方針とした。
初年度にコロナ渦の影響もあり、国際学会などをオンライン参加としたため、本年度の研究費が予定よりも多くなった経緯がある。物価上昇などにより国際学会の旅費が研究費申請時より高額になっており、次年度の旅費として使用する予定である。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件)
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