研究課題/領域番号 |
22K07752
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
山本 晃 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 准教授 (60419695)
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研究分担者 |
植田 大樹 大阪公立大学, 大学院医学研究科, 登録医 (90779480)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 人工知能 / 門脈圧亢進症 |
研究実績の概要 |
門脈圧亢進症は慢性肝疾患などを理由として、門脈圧が上昇することによる様々な症状、合併症の総称である。合併症は、食道胃静脈瘤出血、難治性腹水、肝性脳症、黄疸などであり、それぞれ致命的な疾患である。これらの門脈圧亢進症の診断基準のゴールドスタンダードは、門脈肝静脈圧格差(Hepatic venous pressure gradient: HVPG)測定であるが、侵襲的であり、より低侵襲な推定法が望まれている。今回の研究は、腹部CT画像をAI(artificial intelligence:人工知能)を用いた方法で解析し、門脈静脈圧格差を類推するアルゴリズムを作成することが目的である。本研究のステップは、①症例の蓄積 ②アルゴリズムの作成 という2段階のステップからなるが、①症例の蓄積は過去のデータを用い、件数としては300例程度確認できた。詳細な条件設定は次年度以降の課題とする。②アルゴリズム作成に関しては、基盤アルゴリズムの作成を行った。肝臓の画像から肝細胞癌が早期再発するかという研究を行い、同様の基盤アルゴリズム(アウトカムが肝癌の再発と門脈圧亢進症の有無であるため調整は必要だがほぼ同様のアルゴリズムが使用できる)と考えられた。その結果、症例数が少なく苦慮したがdeveloping data433例, validation data55例, test data55例でAUC=0.79と高い数字を得ることができる基盤アルゴリズムを作成しえた。その結果より本研究では8:1:1程度の割り付けで充分な結果が得られるであろうことが推定できた。またAIが解析にどの部位を注力したかを示すヒートマップも作成が可能であることが確認できた。2023年度よりは2022年度に確立した基盤アルゴリズムと症例抽出法をもってデータを抽出、基盤アルゴリズムにあてはめ、調整、検証する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
門脈圧亢進症は慢性肝疾患などを理由として、門脈圧が上昇することによる様々な症状、合併症の総称である。合併症は、食道胃静脈瘤出血、難治性腹水、肝性脳症、黄疸などであり、それぞれ致命的な疾患である。これらの門脈圧亢進症の診断基準のゴールドスタンダードは、門脈肝静脈圧格差(Hepatic venous pressure gradient: HVPG)測定であるが、侵襲的であり、より低侵襲な推定法が望まれている。今回の研究は、腹部CT画像をAI(artificial intelligence:人工知能)を用いた方法で解析し、門脈静脈圧格差を類推するアルゴリズムを作成することが目的である。本研究のステップは、①症例の蓄積 ②アルゴリズムの作成 という2段階のステップからなるが、①症例の蓄積は過去のデータを用い、件数としては300例程度確認できた。詳細な抽出の条件設定は次年度以降の課題とする。②アルゴリズム作成に関しては、基盤アルゴリズムの作成を行った。造影CT画像に基づく肝細胞癌の術後早期再発(2年以内)のディープラーニング(DL)予測モデルを開発した。本研究と似た肝臓の造影CTと単一のアウトカムの結び付けの研究である。543人の患者を対象とし、8:1:1の割合で訓練、検証、テストのデータセットにランダムに分類した。人工知能モデルは、畳み込みニューラルネットワークと多層パーセプトロンを分類器として用いて実装した。さらに、高リスク群と低リスク群の判別には、ユーデン指数を用いた。早期再発に対する各説明変数の重要度値は、順列重要度を用いて算出した。術後早期再発のDL予測モデルは、曲線下面積が0.71(テストデータセット)、0.73(検証データセット)と良好な結果であり、基盤アルゴリズムが作成されたと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のステップは、①症例の蓄積 ②アルゴリズムの作成 という2段階のステップからなる。昨年度の研究により基盤アルゴリズムが作成できたと考えられた。今回の門脈圧亢進症の有無を調べるため、門脈圧亢進症患者のデータ蓄積をすすめる。昨年度の予備研究では症例数が少ないためアルゴリズム作成に苦慮した。今回の門脈圧亢進症の有無の確認も、症例数が少ないため、正常人のデータも加味することが必要と考えられた。画像からの情報が多いと考えられるHVPG測定は可能と考えられたが、予備研究では肝細胞癌に最も特徴がでると考えられる動脈相を用いた。このことより、本研究では門脈圧亢進症で最も特徴がでる門脈相を使用すべきと考えられた。また腫瘍を関心領域として人為的に囲むか画像全体を使用するかを検討したが、画像全体の方が成績がよいことも判明した。門脈圧亢進症の有無を検証する際には関心領域の設定は行わない方針とした。またAIが解析にどの部位を注力したかを示すヒートマップも作成が可能であることが確認できた。症例の抽出作業を行い、おおよそ予定どおり300例程度の症例があることが確認できたが、2022年度よりは2021年度に確立した基盤アルゴリズムと症例抽出法をもってデータを抽出、基盤アルゴリズムにあてはめ、調整、検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、予備研究を用いた基盤アルゴリズムの作成に注力した。基盤アルゴリズムの作成は当施設の機器を用いて行った。不足分が判明したため、本研究に際して本年度に昨年度の予定通り機器整備を行う予定である。
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