研究課題/領域番号 |
22K07758
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
廣瀬 勝己 弘前大学, 医学部附属病院, 医員 (60623767)
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研究分担者 |
佐藤 まり子 弘前大学, 医学部附属病院, 医員 (30645263)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
前年度までの研究に基づいて、ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)の細胞・マウス試験で用いるべき至適投与量・至適線量が決定された。またマウスの右大腿外側と左側胸部の腫瘍移植とBNCTで用いられるBoronophenylalanine (BPA)の投与時期、中性子の投与時期についても決定された。昨年度に続いて、マウスの右大腿外側と左側胸部皮下の両方へ腫瘍を移植したマウスを作成した。BPA 30 μg/gBWを腹腔内に投与したのち1時間後に右大腿外側の病変部分を露出させ、それ以外の部位についてはガンマ線と中性子線の遮蔽をおこない、右大腿外側の病変部分のみに青森県量子科学センターの中性子照射装置を用いて熱中性子を照射してBNCTを施行した。照射後数日で右大腿の腫瘍は縮小の経過をたどった。合わせて、左側胸部に移植された腫瘍の増大速度が評価されたが、増大速度はBNCTによって抑制されていた。BPA投与の前日よりマウス免疫チェックポイント抗体を数日腫瘍移植マウスへ投与したところ、これらのBNCTによる抗腫瘍効果は右大腿外側の腫瘍のみならず左即胸部の腫瘍においても増強がみられた。これらの事象はSCC-VIIおよびColon-26のいずれの移植腫瘍においても診られた。前年度とデータと合わせて、BNCTにおいての抗腫瘍効果には抗腫瘍免疫が重要な役割を有していることが示唆された。そこで次に、前述と動揺にマウスに腫瘍を移植してBNCTを施行した。照射後のマウス血液中のリンパ球について、抗腫瘍活性を評価すべく、BNCT後のマウスの血液を採取し、CD4分画、CD8分画、GranzymeB、Perforin発現、IFN-γ産生、FoxP3分画を多染色のFACで解析した。予備実験として施行したが、多染色のシグナルを適正に分離して検出することが困難であり、実験計画の再検討が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度に実施するべき実験項目をほぼ計画通りに実施したが、一部予備実験において、複数回の想定どおりのクオリティをもったデータの収集が達成されなかった。当初の予定とは大きくずれ、複数回に亘る予備実験を要してしまい、本年度の研究期間の殆どを費やした。次年度での実験プロトコルの見直しの必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
1. 免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果への、BNCTのboost効果:今年度に実施して得られた結果について、各群での抗腫瘍効果に関する特定タイムポイントでの腫瘍サイズに関する解析、生存曲線に関する解析を行い、免疫チェックポイント阻害剤の併用による効果の増強の有無を明らかにする。2.免疫プロファイル変化の解明:マウス血液を複数の蛍光標識結合抗体によって染色することでリンパ球で生じる好腫瘍免疫活性を評価する。今年度に施行した実験条件について再検証し、適正なデータが収集されなかった事由を明らかにする。これに基づき新たな解析プロトコルを作成し実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の実験項目で使用する予定の抗体量が非常に多くかつ効果であり、当該研究の全期間の研究費のかなり多くの部分を占める。実験は1回で信頼に値するクオリティを有するデータが取れることはまずないため、予備的な検討が必要である。予備実験の段階には既存の抗体を用いることで、できるだけ経費を削減し、本実験においては新鮮な抗体を一括で揃えて最も良好な品質で実験データを収集する予定であった。本年度において予備実験の段階を終了することができなかったため予定の抗体購入が延期となり、次年度への予算の持ち越しが生じた。次年度は、これまでに滞った実験を行う必要から、マウスの購入、血液処理のためのディスポ機器、測定試薬、抗体試薬、必要に応じて解析のための機器、事務用品類といった物品の購入に充てる。実験機器の修理やメンテナンスが必要なものについても充てる。
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