研究課題/領域番号 |
22K07759
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
上野 恵美 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 放射線医学研究所 放射線規制科学研究部, 研究員 (30296826)
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研究分担者 |
住吉 晃 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 分子イメージング診断治療研究部, 主任研究員 (80612530)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 放射線性腸炎モデル / レドックスイメージング / 組織内レドックス状態 / TOLD MRI / 酸素化 / 酸素消費 |
研究実績の概要 |
本研究では、放射線性腸炎モデルの確立を試行するとともに、その病態発生に至るまでの組織レドックス状態の経時的変化と組織障害度との関係を明らかにする。具体的には、MRIによるレドックスイメージング法により安定ニトロキシルラジカル消去速度を測定し、これに基づいて組織内におけるレドックス状態を評価する。更に組織の酸素化量をTOLD MRI(酸素によるT1強調信号の増幅)により測定し、これに基づいて組織の酸素消費の状況を評価する。組織レドックス状態と酸素化量とから、生体組織のエネルギー代謝の状態を評価する指標を確立し、放射線性腸炎モデル病態の発生要因および機序を探る。放射線あるいはその他の障害を受けた生細胞あるいは生体組織に、視覚的に判別可能な症状が出現する前の状態、すなわち「疲労度/障害度/疾病の可能性」に繋がる情報を物理化学的測定により数値化して評価する指標の確立を目指す。 2022年度は、X線単回照射12日後までのマウス直腸・結腸部組織のレドックス状態変化について、これまでのデータを論文にまとめ報告した。また、X線分割照射実験プロトコルを確立した。更に、マウスに高濃度酸素を吸入させた時の組織のTOLD MRI信号の経時変化を解析し、組織の酸素消費速度を評価する手法を確立した。 2023年度は、TOLD信号が比較的検出しやすい脳において、TOLD信号の経時変化に基づく酸素消費速度の解析を実施し、原理と応用について論文化するに至った。また直腸においてX線2 Gy×20回(合計40 Gy)分割照射を実施し、照射後および照射過程での組織のレドックス状態の変化を調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、マウス下腹部(直腸・結腸部位)へのX線10 Gy単回照射後の組織のレドックス状態変化について、これまでの結果をまとめて論文化し、Advanced Redox Research誌において報告した(2023/03/15受理)。直腸・結腸部位でのニトロキシルラジカル由来信号減衰速度がX線照射2日後に有意に低下し、徐々に増加して8日後に有意な増加を示した後、12日以後はコントロールレベルに戻ることが分かった。次に分割照射の影響を調べるため、X線2 Gy×20回(合計40 Gy)分割照射を含む一連の実験プロトコルを確立した。また同時に、比較的TOLD信号変化が検出しやすい脳において、TOLD撮像の基礎的な実験デザインを確定した。更に経時的に得られたTOLD信号の基本的な解析手法を確立し、組織の酸素消費速度を評価する方法を提案した。 2023年度は、マウス下腹部(直腸・結腸部位)へのX線2 Gy×20回(合計40 Gy)分割照射を実施し、分割照射過程、および照射後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月のタイミングで直腸・結腸組織のレドックス状態を調べた。2 Gyを20回照射した場合、照射直後は非照射群と同等のレドックス代謝活性が観察されたが、4日後に亢進が見られ、7日後に再びコントロールレベルに低下し、28日後に再び亢進する傾向が観察された。TOLD MRI撮像によるマウス脳組織の酸素消費速度の評価法については、X線照射後の脳組織での酸素消費速度変化の評価を進め、データをまとめて論文化して投稿するに至った。更に直腸・結腸部位においても、TOLD MRI信号変化に基づいて酸素消費速度の評価が可能か否か試み、感度は低下するもの直腸・結腸組織で酸素消費速度を評価することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
マウス下腹部(直腸・結腸部位)へのX線2Gy×20回(合計40 Gy)分割照射中、および照射後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月のタイミングで、直腸・結腸組織の酸素消費速度の変化を評価する。TOLD MRI撮像によるマウス直腸・結腸組織の酸素消費速度の評価法について論文化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍中に実験数が減少したため、使用額の変更が生じた。 今年度は補足して実験を行う予定である。
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