研究課題/領域番号 |
22K07760
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
馬場 大海 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医学物理士 (70763572)
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研究分担者 |
堀田 健二 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, 医学物理士 (60616134)
北條 秀博 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 医員 (60638774)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 強度変調陽子線治療 / NTCPモデル / RBE / 照射ログ情報 |
研究実績の概要 |
本研究では、強度変調陽子線治療患者に対してより正確な有害事象発生予測を行うことを目的として、日々の患者構造情報および装置情報、さらに陽子線の深さごとに異なる生物学的効果を考慮した線量計算システムを開発し、より実際の投与線量に近い線量分布と有害事象発生情報をもとに強度変調陽子線治療のNTCPモデルの構築を行うことを目指している。 本研究は大きく分けて「Actual線量分布を計算可能なシステム開発」「開発システムで再計算された治療患者のActual線量情報及び診療情報のレトロスペクティブ解析」「NTCPモデルの構築」で構成されている。 令和4年度は、Actual線量分布を計算可能なシステム開発を予定していた。Actual線量分布の計算には、日々の照射情報&CT画像、物理線量分布、線量平均LET分布、可変RBEモデルが必要である。陽子線照射装置のビームライン中には、その場所での陽子線の位置や強度、ビームサイズを計測するモニタが挿入され、これらの計測情報は照射ログ情報としてシステムに保存されている。今回、任意の照射ログ情報&CT画像から簡易モンテカルロ法(SMC)を用いて物理線量分布、線量平均LET分布を計算するシステムを開発した。また、計算精度検証のため、線量平均 LET の計算方法として最も一般的なフルモンテカルロ法(FMC)を利用する。FMCコードであるGeant4を用いてスキャニング照射装置のジオメトリ構築及び物理線量分布、線量平均LET分布計算を行ない、開発システムとの比較検証を実施した。その結果、各エネルギーにおけるペンシルビームの深部線量&線量平均LET分布はGeant4とよく一致していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度は、Actual線量分布を計算可能なシステム開発を予定していた。そのため、治療計画情報ではなく照射した結果である日々の照射情報と患者CT 画像、さらに深さごとに変化するRBEを考慮した計算モデルを用いて、患者に照射された実際に近い線量分布(Actual線量分布)計算が可能なシステムの開発を実施した。開発システムでは、任意の照射ログ情報&CT画像からSMCを用いて物理線量分布、線量平均LET分布を計算可能であり、FMCを用いた計算精度検証も実施している。次段階として、RBEモデルの実装を予定しているが概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は大きく分けて「Actual線量分布を計算可能なシステム開発」「開発システムで再計算された治療患者のActual線量情報及び診療情報のレトロスペクティブ解析」「NTCPモデルの構築」で構成されている。 現在Actual線量分布を計算可能なシステム開発を目指しており、今後の研究の方針としては、開発システムへのRBEモデル実装及び計算精度検証の実施を行う。また、検証後のレトロスペクティブ解析に向け陽子線治療を施行した患者の照射情報及び有害事象発生情報の収集を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、開発を一部委託した関係で購入予定であったハードウェアが未購入であること、またコロナウイルスの影響で国内、海外学会への参加及び報告ができなかったことが挙げられる。 今後、開発ソフトウェアの実装に伴うハードウェアの購入、システムの精度検証のための細胞実験器具の購入、レトロスペクティブ解析作業に対してデー タ保存媒体及び解析ソフトウェアの購入を予定している。また、得られた研究成果等は国内学会、国際学会で随時発表し、学会誌等に投稿する予定であり、それらの旅費及び投稿費用が必要である。
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