研究課題
スルファサラジンはヒト食道扁平上皮癌細胞株の放射線感受性を上昇させる。食道扁平上皮癌細胞株にスルファサラジンを投与した後、放射線照射したところ、放射線感受性の増加が観察された。これら2種類の株化細胞に対する増強効果はスルファサラジンと放射線照射の阻害効果の代数和よりも有意であることから併用による相乗効果を示唆するものであった。スルファサラジン単独療法では死細胞数は増加しなかったことから、この生存抑制効果は細胞死ではなく、むしろ増殖抑制であることが示唆された。さらにCRISPR Cas9システムによるCD44v9-KOヒト食道扁平上皮癌細胞株の樹立とその放射線感受性を解析した。その結果、放射線治療を受けたCD44v9-KO株化細胞は、コントロールと比較して細胞数が減少し、MTTアッセイで細胞増殖能の低下を示した。食道癌組織におけるCD44アイソフォーム発現とCRT感受性との関連性。CRTに対する感受性の差とCD44アイソフォームの発現との関連を解析した。CRT(CDDP/5FU)に抵抗性を示した患者では、CD44 isoform1とCD44 isoform2のmRNA発現が高値であった。CD44 isoform1およびisoform2のmRNA発現は、化学放射線療法抵抗性群で治療感受性群よりも高かった。一方、CD44v9-freeアイソフォームでは両群間に差はなかった。GSEAの結果、EMTに関与する遺伝子セットはCD44v9アイソフォームの発現レベルと正の相関があることが明らかであった。これらの結果は、食道癌細胞においてCD44vが自然発生的な上皮間葉転換のマーカーであるという報告と一致していた。
3: やや遅れている
データは揃っているが、論文報告をなしえていないことである。現在、CD44v9の発現について組織で検証中であり、これを終えれば論文は完成し、投稿が可能となる。
食道癌CRT実施前後におけるシングルセル解析を行い、これまでの解析結果、CD44v9のCRT感受性に付いて検証を行う。食道癌手術検体でscRNAseq解析およびspatial transcriptomeを行い、細胞間クロストーク機構とそれを制御する遺伝子や分子を同定する。特に食道がんCRT耐性症例と感受性症例、それぞれの症例の組織における構成細胞を明らかにして、CRT耐性時に関わる細胞群、遺伝子群を同定明らかにする。このとき、細胞間の共局在を明らかにする解析パイプラインとしてCell2Location。共局在るときに重要な情報交換分子の優先順位と、その発現由来細胞についてはNichNet。さらに共局在細胞の深層学習による組み合わせはDeepCOLORを用いて行う。
次年度の実験消耗品使用予定
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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