研究課題/領域番号 |
22K07778
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
臼井 桂介 順天堂大学, 保健医療学部, 講師 (20714132)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 深層学習 / 画像誘導放射線治療法 / 放射線治療学 / 人工知能 / 画像工学 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、転移性脳腫瘍に対する高精度放射線治療法の照射精度を支援するための画像情報を人工知能を用いて構築することを目指しており、本研究ではCTおよびコーンビームCTとMRIを相互画像変換したマルチモダリティ画像誘導放射線治療法を実現することが目的である。当該年度の研究計画は、サイクル敵対生成ネットワークによる深層学習のための入力画像データベースの構築を構築することと、相互画像変換処理を実現する独自の深層学習モデルの整備することであった。 当該年度は深層学習用の頭部画像データを収集するため、世界中の公開画像データベースを検索し、放射線治療用画像の学習に転用可能なCT、MRIおよびコーンビームCT画像を抽出した。その結果、CTおよびMRI画像は5000枚以上の画像データを確保可能であるが、コーンビームCT画像の公開データは非常に小数であることがわかった。本研究の深層学習に利用可能な頭部画像データ(CTおよびMRI)は、提供先の承認を得た後の自施設のデータサーバにダウンロードし、深層学習に利用可能な環境を構築した。 次に相互画像変換処理のための深層学習モデルとして、先行してサイクル敵対生成ネットワークを構築し、その画像合成精度を検証した。検証には胸部CT画像および胸部コーンビームCT画像を利用し、低画質の胸部コーンビームCT画像を高画質な胸部CT画像へ合成する深層学習モデルを構築した。その結果、合成画像は原画像の画質の大きく近づき、画像を構成する画素値も原画像のCT値に近似した値を示すことができた。さらに本合成画像を用いた放射線治療の線量計算分布を計算したところ、合成した胸部コーンビームCT画像の線量計算値は通常の胸部CT画像のものと約5%以下の精度で一致することができた。本研究内容は論文化し、2編の英語論文を公開することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
深層学習のための画像データを整備し、基本となる深層学習モデルを構築することができたため、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は頭部コーンビームCT画像を合成する深層学習モデルを作成する必要がある。しかしながら、頭部コーンビームCT画像は公開データベース等にほとんど存在していないことがわかった。そこで、通常のマルチスライスCT画像からコーンビーム投影を作成し、フェルドカンプ法で画像再校正することで、仮想的なコーンビームCT画像を構築する予定である。これにより深層学習に必要な頭部コーンビームCT画像を膨大に準備することができると考えられる。なお、本プログラムは構築済であるため、今後はその仮想投影画像の正確性に関して検証を進める予定である。 また、上記学習データで構築した学習モデルを利用してCTおよびコーンビームCTとMRIを相互画像変換を実現し、放射線治療計画の線量分布作成と照射位置照合に利用できうるかの検証を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度では深層学習の計算負荷が大きく無いと考えたため、深層学習のためのコンピュータを購入していない。また、投稿中の論文が査読中のため今年度は投稿費用が発生しなかった。そのため次年度使用額が発生している。 次年度は大規模な学習データににより深層学習を実施する予定であるため、深層学習用コンピュータをを計上する予定である。また論文の投稿料が生じる予定である。進行中の研究内容に関して国際学会での発表を予定しているため、そのための諸経費を計上する予定である。
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