研究課題/領域番号 |
22K07797
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
松田 恵 (武智恵) 愛媛大学, 医学部附属病院, 准教授 (40600656)
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研究分担者 |
松田 卓也 愛媛大学, 医学系研究科, 助教 (10837123)
小川 遼 愛媛大学, 医学部附属病院, 助教 (50895654)
城戸 輝仁 愛媛大学, 医学系研究科, 教授 (50403837)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 乳癌 / 乳腺MRI / Synthetic MRI / 定量マッピング / 人工知能 / レディオミクス特徴量 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、手法A:Synthetic MRIから得たマッピング画像から作成したAIによる良悪性判定プログラム、手法B:放射線科医によるBI-RADSでのカテゴリー分類の2種類の方法での乳腺病変の良悪性の診断能を比較し、Synthetic MRIとAIを用いた新たな診断方法の確立である。<手法A>2022年度はSynthetic MRIにより作成した造影前後の3種類の定量値(T1値、T2値、プロトン密度)のマッピング画像から病変部を含むスライスをjpeg形式で抽出して学習用画像とし、AIを用いた良悪性判定プログラムを作成し診断能を算出した。まずは、mass病変(178人、185病変 良性:51、悪性:134)のみを対象に検討した。プログラム作成では、学習画像からレディオミクス特徴量を抽出し、機械学習で解析する方法を用いた。矩形トリミング・マスク・画像フィルター処理後に88種のレディオミクス特徴量を抽出した。造影前・後の各3種類(合計6種類)のマッピング画像から得た528種の特徴量から100種を特徴量選択し、機械学習用データセットとした。機械学習ではStratified 3-fold交差検証を行い、平均診断能を評価した。造影前後の画像フィルター18種類、6通りの機械学習手法の18×18×6=1944通りの組み合わせ中、最も高い平均正診率のモデルを結果とした。正診率が最も高いのは造影前画像にBilateralフィルター、造影後画像にCurvatureFlowフィルターを使用し、ナイーブベイズで学習したモデルで、悪性病変に対して感度0.76、特異度0.63、陽性的中率0.87、陰性的中率0.47、F値0.81、正解率0.73という結果を得た。<手法B>2022年度は、上記の手法Aに用いた185病変について、2名の放射線科医が、BI-RADSでのカテゴリー分類を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は新型コロナウイルス拡大の影響もあり、モデル作成の際に必要なAIの手法などに関する対面でのミーティング実施や学会での現地参加が難しく、研究の進行にも若干の遅れが生じた。対象病変は、当初massとnon mass両方の予定であったが、non mass病変では学習画像作成に必要な病変の正確な形状・範囲の把握をマッピング画像上で行うことが困難であったため、まずはmass病変(178人、185病変 良性:51、悪性:134、良悪性はすべて病理組織学的診断にて確定)のみを対象に検討を行うこととした。また、使用するAIの手法としては、当初Deep Learningの使用を想定していたが、検討症例数が比較的少ないことから、準備した学習画像からレディオミクス特徴量を抽出し、機械学習による解析を行う方法へ変更した。
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今後の研究の推進方策 |
手法Aに関しては、引き続き2022年度に作成したAIを用いた良悪性判定プログラムの診断精度向上を目指す。具体的には、①良悪性判定プログラム作成用の学習用画像の保存形式をjpegではなく、ピクセル毎の各定量値のデータ情報を含むDICOM形式に変更する。②レディオミクス特徴量抽出の際に行った各種マッピング画像上での病変部の矩形トリミングを、病変のセグメンテーションへ変更する。③対象患者のマッピング画像以外の乳腺MRIの画像所見 (病変サイズ、DCE-MRIでのダイナミックカーブのパターン、T2強調画像の信号など) や、その他の臨床情報 (年齢、閉経の有無など)のデータを収集し、特徴量として追加した機械学習の実施などを試みる。 また、手法Aにおけるテスト用病変を準備する。テスト用病変でもプログラム作成時の学習用病変と同様に、DICOM形式でのマッピング画像抽出、病変のセグメンテーション、マッピング画像以外の乳腺MRIの画像所見その他の臨床情報の収集を実施する。 手法Bに関しては、良悪性判定プログラム作成に使用した185病変についてのBI-RADSによる良悪性診断能を算出し、手法Aと比較する。その他、上記のテスト用病変についても、2人の放射線科医によるBI-RADSカテゴリー判定を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、関連学会への現地参加が困難となり、旅費の支出が予定よりも少なかった。また、検討症例数などを考慮し、モデル作成に使用するAIの手法を当初予定していたDeep Learningから変更したこともあり、既存のコンピューターを使用して研究を行うことにしたため、当初予定していた人工知能解析用コンピューター(Deep Learning BoxⅡ)の購入を取りやめた。2023年度は、関連学会への参加や研究手法に関するミーティング実施のための旅費、データ管理用SSDの購入などに経費を使用する予定。
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