研究課題/領域番号 |
22K07811
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研究機関 | 京都医療科学大学 |
研究代表者 |
澤田 晃 京都医療科学大学, 医療科学部, 教授 (80543446)
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研究分担者 |
椎木 健裕 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (30610456)
石原 佳知 日本赤十字社和歌山医療センター(臨床研究センター), 放射線治療科部, 医学物理課長 (60709351)
森山 真光 近畿大学, 情報学部, 准教授 (00283953)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 適応放射線治療 |
研究実績の概要 |
適応放射線治療では、治療期間中の病巣の変化や臓器の位置移動や変形に合わせて最適化し再計画する。近年、さらに拡張されたオンライン適応放射線療法が臨床現場に導入されている。その際、治療直前に行う再計画の作業量や作業時間がネックとなる。その負担を軽減することを目的としたMRI (Magnetic Resonance Imaging)画像を用いた専用装置が上市されたが、設置場所の確保やコスト面等により導入施設はまだまだ限られている。また、従来の治療では考慮する必要性がなかった電子密度や出射2次電子が磁界から受ける力により戻ってくることに起因する表面線量の増大等の知見の蓄積に時間を要する。本研究では、既存のCBCT(Cone-Beam Computed Tomography)搭載型の治療装置を用いて、再計画におけるCBCT画像の再構成から線量分布予測までの処理を短時間で可能とする、CBCT画像ベースのシステム開発を目指している。本年度は、CBCT画像から抽出した重要臓器や照射標的の解剖情報から線量分布を予測可能の一つとして、前立腺を対象としたCTセグメンテーションの自動化を検討した。オンライン適応放射線療では、解剖学的情報が変化するため、毎日の検証画像を用いて治療計画を立て直す必要がある。しかし、手動によるセグメンテーションは多大な時間を要し、また、観察者間の精度のばらつきにより日常的な使用は制限される。そこで、前立腺放射線治療計画を対象として、patch-wised(PW) U-netベース自動骨盤CTセグメンテーションモデルを考案し、従来の非PW U-netモデル(C-U-net)と比較して、セグメンテーションの精度検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、局所進行前立腺がん患者100人の非造影全骨盤CTをデータセットとした。放射線腫瘍医が描出した前立腺や膀胱、直腸の臓器の輪郭をground truthとした。データセットをトレーニング(n=70)とテスト(n=30)のサブセットに分割した。PW-U-netにおいて、入力CTと対応するセグメンテーション画像(256 x 256)を、4パッチ(128x128)と16パッチ(64x64)に分割した。各モデルにトレーニングデータを適用して2D-U-netモデルを構築し、テストデータを用いてセグメンテーション画像を検証した。前立腺および膀胱、直腸に対して、4-PW-U-net、16-PW-U-net、C-U-netによる予測セグメンテーション結果とground truth画像間の類似度係数(DSC)とハウスドルフ距離(HD)を求めた。4-PW-U-netおよび16-PW-Unet、C-U-netのDSCは、前立腺の予測セグメンテーションとground truthとでは、それぞれ0.83±0.04および0.84±0.04、0.66±0.07、膀胱では0.86±0.03、0.89±0.03、0.90 ± 0.02、直腸では、0.75±0.03、0.79±0.03、0.65±0.02となった。HDは、前立腺では2.57±0.82、2.57±0.80、2.89±0.74 mm、膀胱のHDは2.95±0.90、2.89±0.91、2.88±0.55 mm、直腸のHDは2.26±0.55、2.16±0.61、2.46±0.75mmとなった。4-PW-U-netはC-U-netに比べ、すべての臓器においてセグメンテーションの精度を向上させたが、16-PW-U-netでは、前立腺と直腸の改善されないことが分かった。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度進めた、Patchベースのディープラーニングセグメンテーションについては、欧州放射線腫瘍学会にて学会発表を行う。また、CBCT画像の画質を改善するアルゴリズムを考案し、上記、U-netモデルにおけるセグメンテーションの精度向上を図る。CT画像の画質向上として、逐次近似法のソフトウェアを開発する。ソフトウェア開発には多大な時間を要するため、著作権を含めて使用可能な各種ライブラリを探索して利用する。処理を高速化するためにGPU(Graphics Processing Unit)上で実装を検討する。その際、分担研究者の大学院生の協力を得ながら効率的に開発を進める。同時に、撮影ファントムと撮像に協力施設を探し、ファントム実験を実施できる環境を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
半導体の供給量が少なく仕様と予算に合致した計算機が入手困難であった。今年度は開発状況を鑑みて仕様を見直し手配する。
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