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2022 年度 実施状況報告書

副腎白質ジストロフィーはコレステロール代謝障害による免疫応答の破綻が原因か?

研究課題

研究課題/領域番号 22K07817
研究機関富山大学

研究代表者

守田 雅志  富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 准教授 (20191033)

研究分担者 宗 孝紀  富山大学, 学術研究部薬学・和漢系, 教授 (60294964)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード副腎白質ジストロフィー / ペルオキシソーム / 極長鎖脂肪酸 / CD4陽性T細胞
研究実績の概要

本研究計画は難病指定されている副腎白質ジストロフィーの発症機構の解明を目的とし、本疾患の分子病態を解明することにより、発症機構に基づいた発症抑制薬の開発を目指している。本疾患はペルオキシソーム膜タンパク質ABCD1の機能欠損を原因とする難治性の炎症性脱髄疾患で、脳における炭素数22以上の極長鎖脂肪酸の異常蓄積が発症の原因と考えられているが、本年度は発症の直接の原因がコレステロール代謝障害による免疫応答の破綻がその本質である可能性について以下の解析を行った。
1)HeLa細胞及びU87細胞のABCD1欠損細胞をモデル細胞として極長鎖脂肪酸代謝、コレステロール代謝及び免疫応答について解析を行った。その結果、ABCD1機能欠損により極長鎖脂肪酸の代謝異常と共にコレステロールエステル量の増加と脂肪滴の増加が確認された。またABCD1機能欠損U87細胞では、TLR3を介した免疫応答が減弱していることが明らかとなった。
2)脾臓から精製したナイーブCD4陽性T細胞をTh1分化誘導条件下で培養した結果、Abcd1欠損細胞でIFN-γの産生量が野生型に比べ高く、逆にIL-10産生量は低かった。またIfngおよびIl10遺伝子発現を制御する転写因子Blimp-1をコードするPrdm1遺伝子の発現量がAbcd1欠損Th1細胞で顕著に低下していた。野生型CD4陽性T細胞にLXRアゴニストを処理するとTh1応答の亢進が認められ、一方Abcd1欠損CD4陽性T細胞のTh1型応答はLXRアンタゴニスト処理により減弱した。このことから、Abcd1欠損によるTh1型応答の亢進がLXR活性化によるBlimp-1の発現抑制に起因していることが明らかとなった。以上のことからALD発症にはTh1型応答の亢進が関与している可能性が考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

研究計画では、1年目はAbcd1欠損CD4陽性T細胞がコレステロール代謝障害による脂質ラフトを介したシグナル伝達の異常によりTh1エフェクター細胞への極性化が亢進していることを、Abcd1欠損マウスを使用して明らかにすることを計画した。現在までに、HeLa細胞をモデル細胞としてABCD1機能欠損による細胞内コレステロール代謝障害について詳しく解析している。同時にCD4陽性T細胞でのコレステロール代謝について解析を進めており、Abcd1欠損CD4陽性T細胞のラフト構造が野生型と異なっていることを見出している。従って、実験は概ね計画通りに進んでいる。

今後の研究の推進方策

Abcd1欠損CD4陽性T細胞のTh1応答の亢進の機序について引き続き解析を行う。これまでAbcd1欠損Th1細胞ではCh25h遺伝子の発現増加を確認しており、この遺伝子がコードする酵素による25-ハイドロキシコレステロールの産生増加がTh1応答の亢進に関与しているか検証する予定である。またABCD1欠損によるコレステロール代謝異常がラフト構造及びシグナル伝達に及ぼす影響を検証する予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初の研究計画では、Abcd1欠損CD4陽性T細胞が脂質ラフトを介したシグナル伝達の異常によりTh1エフェクター細胞への極性化が亢進していることを明らかにすることを計画していたが、脂質ラフトの解析が予定通り進まなかったため、一部の実験はモデル細胞を使用したコレステロール代謝障害に着目して解析する実験に変更した。実験計画の変更に伴い次年度使用額が生じた。次年度は当初の計画通りにAbcd1欠損CD4陽性T細胞でのコレステロール代謝異常と脂質ラフトの解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Detection of Characteristic Phosphatidylcholine Containing Very Long Chain Fatty Acids in Cerebrospinal Fluid from Patients with X-Linked Adrenoleukodystrophy.2022

    • 著者名/発表者名
      Fujitani N, Saito M, Akashi T, Morita M, So T, Oka K.
    • 雑誌名

      Biol Pharm Bull.

      巻: 45 ページ: 1725-1727

    • DOI

      10.1248/bpb.b22-00506.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TNF Receptor-Associated Factor 5 Limits IL-27 Receptor Signaling in CD4+ T Lymphocytes.2022

    • 著者名/発表者名
      Kawahara E, Azuma M, Nagashima H, Omori K, Akiyama S, Fujimori Y, Oishi M, Shibui N, Kawaguchi K, Morita M, Okuyama Y, Ishii N, So T.
    • 雑誌名

      J Immunol.

      巻: 208 ページ: 642-650

    • DOI

      10.4049/jimmunol.2001358.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] OX40 Ligand-Mannose-Binding Lectin Fusion Protein Induces Potent OX40 Cosignaling in CD4+ T Cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Sato A, Azuma M, Nagai H, Imai W, Kawaguchi K, Morita M, Okuyama Y, Ishii N, So T.
    • 雑誌名

      Biol Pharm Bull.

      巻: 45 ページ: 1798-1804

    • DOI

      10.1248/bpb.b22-00493.

    • 査読あり
  • [学会発表] ペルオキシソーム膜ABCD1タンパク質の脂肪滴形成への関与.2022

    • 著者名/発表者名
      守田雅志, 浅倉礼奈, 土手陽世, 渡辺志朗, 川口甲介, 宗 孝紀.
    • 学会等名
      日本薬学会第142年会
  • [学会発表] ペルオキシソーム膜ABCD1タンパク質の機能欠損は脂肪滴形成を促進する.2022

    • 著者名/発表者名
      土手陽世, 淺倉礼奈, 山田祥大朗, 守田雅志, 渡辺志朗, 宗 孝紀.
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部 第40回大会
  • [学会発表] Abcd1欠損CD4陽性T細胞の機能異常とスタチンの効果.2022

    • 著者名/発表者名
      前田澪那, 大石真結, 守田雅志, 宗 孝紀.
    • 学会等名
      日本生化学会北陸支部第40回大会
  • [学会発表] Abcd1欠損CD4陽性T細胞のTh1型応答の亢進.2022

    • 著者名/発表者名
      前田澪那, 大石真結, 守田雅志, 宗 孝紀
    • 学会等名
      第95回日本生化学会大会
  • [学会発表] Abcd1-deficiency supports Th1-lineage commitment.2022

    • 著者名/発表者名
      Reina Maeda, Mitsuki Azuma, Masashi Morita, Takanori So.
    • 学会等名
      The 51st Annual Meeting of the Japanese Society for Immunology

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公開日: 2023-12-25  

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