研究課題/領域番号 |
22K07819
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
成田 敦 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (20625149)
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研究分担者 |
村松 秀城 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (00572570)
奥野 友介 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00725533)
高橋 義行 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (40432273)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 骨髄不全症 / 再生不良性貧血 / 低形成骨髄不全症 / 次世代シーケンサー / シングルセル遺伝子発現解析 |
研究実績の概要 |
小児骨髄不全症は骨髄低形成および汎血球減少を特徴とする稀な血液疾患であり、先天性と後天性に大別される。先天性にはFanconi貧血や先天性角化不全症などの遺伝性骨髄不全症が含まれる。後天性の小児骨髄不全の診断においては、再生不良性貧血とRefractory cytopenia of childhood (RCC) の鑑別が問題となる。RCCは骨髄異形成症候群の一病型とされ、再生不良性貧血とは形態学的に区別されるが、汎血球減少をきたし、免疫抑制療法が奏功する点については差異がなく,病態機構の異同については明らかになっていない。本研究の目的はRCCを含む小児骨髄不全の病態機構を解明することである。 小児骨髄不全症252症例に対して形態学的診断を前方視的に検討した。AA、RCCおよびRCC-MLDの内訳はそれぞれ63例(25%)、131例(52%)、58例(23%)であり、AAとRCCでは治療成績に差はみられなかったが、RCC-MLDは診断時の染色体異常の出現率が高く、造血細胞移植における生着不全の発症率も高いことが示された。さらに、小児骨髄不全症患者160症例に対してターゲットシーケンスを実施し、21%に体細胞遺伝子変異を伴うクローン性造血の存在を確認した(未発表データ)。複数例に観察された変異遺伝子はBCOR(12例)、PIGA(4例)であり、これらの遺伝子変異はAAおよびRCC症例においても検出されたが、造血器腫瘍の関連遺伝子であるTP53、CSF3R、U2AF1、SETBP1変異は、いずれもRCC-MLD患者においてのみ同定された。本研究の結果からはAAとRCCの病態には差異はないが、RCC-MLDは進行期MDSにより近い疾患概念であることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検体の細胞数が少なく、シングルセル遺伝子発現の解析については条件検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
小児骨髄不全症における病態解明を目的として、AA、RCC、RCC-MLD患者、正常コントロールの造血前駆細胞(Lin-CD34+)とT細胞(CD3+)を用いたシングルセル遺伝子発現解析を実施する。小児骨髄不全症におけるTリンパ球と造血前駆細胞とのリガンド-レセプター関係を解析するため、CD 3陽性細胞をFACS sortingにより分取し、造血前駆細胞と1:1で混合したものをサンプルとして、Chromium Next GEM シングルセル3’キットv3.1を使用した GEM形成からライブラリを作成する。シーケンスはマクロジェン・ジャパンに外注し、Hiseq Xを用いて1サンプルあたり27万リードで読み取る。解析はSeurat, clusterProfiler, singleR, monocle3, STREAM, CellPhoneDBを使用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
条件検討のためシングルセル遺伝子発現解析が進まなかったため、次年度使用が生じた。令和5年度はシングルセル遺伝子発現解析等に使用する。
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