研究課題
(主たる成果)背景:COVID-19の重症化には過剰な免疫応答に伴う活性酸素種(ROS)の生成と血管機能不全が関与する。ROS増加は一酸化窒素(NO)合成を抑制し、血管拡張不全と血栓形成を促進する。血管内皮でのNO合成ではアルギニンを基質にシトルリンが生成される。本研究ではCOVID-19肺炎患者における酸化ストレスとNOに関連するアミノ酸代謝を解析した。方法:COVID-19による入院患者100例を対象に入院時・回復期の血清検体を分析した。総酸化能(d-ROM)、非対称ジメチルアルギニン (ADMA)、亜硝酸塩/硝酸塩、アルギニン、シトルリン、オルニチンを測定した。患者を「入院時の胸部CTでの肺野病変(全肺野の10%以上)の有無」「入院時の酸素吸入の有無」「入院後に酸素吸入開始の有無」にて2群に分けて比較した。結果:①入院時に10%以上の肺野病変を認めた患者群、②入院時に酸素吸入していた患者群、③入院後に酸素吸入を開始した患者群では対照群と比べてd-ROM高値およびシトルリン低値を認めた。これらは血清LDHやCRP値と有意に相関した。亜硝酸塩/硝酸塩、ADMA、アルギニンに有意差はなかった。血清シトルリン値とd-ROM値とは有意な負の相関を示した。回復期では急性期に比べて血清d-ROMは有意に低下し、血清シトルリンは有意に増加した。結論:肺野病変または酸素要求を伴うCOVID-19患者では、酸素要求の低いCOVID-19患者に比べてd-ROM高値とシトルリン低値であった。酸化ストレス亢進とシトルリン代謝不均衡がCOVID-19肺炎の病態形成に関与する可能性が示された。(その他)COVID-19患者へのテプレノン投与の臨床試験、乳幼児のCOVID-19ワクチン接種の副反応調査、周産期におけるCOVID-19感染対策、COVID-19後の川崎病様症候群について論文発表した。
2: おおむね順調に進展している
英文にて、COVID-19に関連した論文が5編(次の論文リストの#2~5)、COVID-19感染の合併症として重要な川崎病様症候群についての論文(次の論文リストの#1)が1編、すでに発表されている。主たる研究(COVID-19重症化における酸化ストレス亢進とアミノ酸代謝異常の病態生理学的意義)については英語論文は作成すみであり、今月(5月)中に投稿する予定になっている。
主たる研究(COVID-19重症化における酸化ストレス亢進とアミノ酸代謝異常の病態生理学的意義)については英語論文は作成すみであり、今月(5月)中に投稿する予定です。本研究についてはデータ再評価と英文化に時間を要しており、急いで進める予定です。関連する基礎研究も、可能なかぎり実行するように力を尽くします。
昨年度、完遂する予定であった「COVID-19重症化における酸化ストレス亢進とアミノ酸代謝異常の病態生理学的意義」の英語論文発表に使用するつもりです(投稿料など)。
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