研究課題/領域番号 |
22K07823
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
上野 健太郎 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 講師 (20644892)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 川崎病 / 冠動脈瘤 / 自然免疫 / 組織障害関連分子パターン |
研究実績の概要 |
背景:私たちは、in vitroの実験で High mobility group box-1 (HMGB1) が、インフラマソームに関与し、川崎病冠動脈病変形成に最も関与する Interleukin (IL)-1βの発現を増加させることを明らかにした。本研究では、HMGB1を枢軸とした宿主自然面系応答の制御を念頭に、川崎病冠動脈病変や遠隔期後遺症を減らす新たな治療戦略を開発することを目的とする。方法:Lactobacillus casei cell wall extract (LCWE) を腹腔内投与し、川崎病モデルマウスを作成した。川崎病モデルマウス群は、無治療群 (PBS投与群)、免疫グロブリン (IG) 投与群、免疫グロブリン+抗HMGB1抗体 (IG+aHMGB1) 投与群の3群に分類し、マウス心臓切片の病理組織、心臓組織中のサイトカインmRNA解析、血漿中の炎症性サイトカイン発現量を評価し比較した。結果:病理組織;無治療群ではコントロール群と比較し、冠動脈周囲に炎症細胞の浸潤がみられ、外弾性板の断裂、中膜平滑筋層の増生がみられた。IG群、IG+aHMGB1群は、無治療群と比較し炎症細胞の浸潤が抑制された。IG+aHMGB1群ではIG群と比較し、炎症スコアが有意に低下した。心臓組織中のサイトカインmRNA解析;無治療群ではIL-1β、IL-6、TNFα、VEGF-A、RANTESの発現量が増加したが、IG群およびIG+aHMGB1群ではこれらの発現量が有意に低下した。IG+aHMGB1群ではIG群と比較し、これらの発現量が有意に低下した。血清サイトカインも、IL-1β、IL-6を中心に同様の結果が得られた。 今後の方針:仮説が in vivoでも検証されている。引き続き、分子生物学的作用機序を解明し、新規治療薬の開発を見据えた実験を実施していく予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請時の研究計画より遅れている。2022年度は、小児における新型コロナウイルス感染症流行に伴い、計画に沿った連続した研究が実施できない日ができたため、再実験、計画の練り直しに時間を要した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究成果を検証するため再現性が得られるかを確認する。特に蛋白解析については、安定した結果が得られていないため、問題点を抽出し検証していく。私たちは、川崎病冠動脈病変を抑え遠隔期の心後遺症を減らすため、HMGB1を枢軸とした宿主自然免応答の制御機構が重要と考え、新規治療薬の開発に有望と考えている。①活性化HMGB1の放出阻害、②HMGB1の中和・吸着、③HMGB1受容体のブロック、を念頭に、①ステロイド製剤や抗炎症薬、②ヒストンアセチル化酵素 (HAT) 阻害薬やトロンボモジュリン (TM)、③ヘパリンやヘパラン硫酸鎖ならびにその構造誘導体、に着目した。わたしたちはこれらの薬物が宿主自然免応答制御の新たな治療薬候補となると仮説を立て、検証していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の拡大による影響で、連続した実験を十分に実施することができなかった。生じた次年度使用額は引く続き2023年度に使用する予定である。
|