研究課題/領域番号 |
22K07837
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所) |
研究代表者 |
山崎 美和 (若林美和) 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪母子医療センター(研究所), 骨発育疾患研究部門, 流動研究員 (50455549)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | TNSALP / Phosphate |
研究実績の概要 |
低ホスファターゼ症(HPP)は組織非特異型アルカリホスファターゼ(TNSALP)をコードするALPL遺伝子の機能喪失に基づき、骨石灰化障害など多彩な症状を呈するが、病態形成機構は完全には理解されていない。そこで、健常人由来iPS細胞にCRISPR/Cas9を適用してALPL-knockout (KO)細胞を樹立し、骨芽細胞系列に分化誘導して解析を行っている。 健常人由来iPS細胞株にALPLのExon 3, 4の標的配列に対する合成guide RNAとCas9蛋白質を導入し、欠失とフレームシフトが誘導されたクローンを選定した。複合ヘテロ変異が同定されたKOクローン#1及び#2と片アレルにのみ変異が誘導されたhetero KO を解析に用いた。KO #1及び#2においてはTNSALP酵素活性が完全に喪失しており、hetero KOはisogenic controlの半分程度の残存活性を保持していた。リン供与体としてβグリセロリン酸を含む骨芽細胞分化誘導培地を用いて培養したところ、KO においては、in vitro石灰化が著明に抑制されていた。一方hetero KOにおいては、培養2週目以降、isogenic controlと同等の石灰化を示した。βグリセロリン酸の代わりに3 mMのリン酸を含む培地を用いて分化誘導したところ、KO #1及び#2においても石灰化は回復したが、ハイドロキシアパタイトに特異的に結合するOsteoImage蛍光色素による染色性はisogenic controlやhetero KOとは異なっていた。分化誘導時、ALPL-KO iPS細胞では石灰化の障害にも関わらず、isogenic controlに比しRUNX2の発現は維持され、OSTEOPONTINの発現が増加していた。また、KOでは細胞外ATPが増加し、ATP受容体の発現が変化していた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集によりALPL両アレルに変異を有する複合ヘテロiPS細胞と片アレル性ヘテロ変異のiPS細胞を樹立することに成功している(HPPモデル細胞の樹立)。さらにこれらの細胞を骨芽細胞分化誘導することに成功しており、isogenic controlを使用した正常な石灰化と複合ヘテロiPS細胞を使用した異常な石灰化に分けてin vitroでの解析が進んでおり興味深い結果が得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
TNSALPの産物である細胞外リン酸はシグナル分子として遺伝子発現や細胞の挙動を制御することを我々は以前報告しており、HPPにおいては細胞外リン酸惹起シグナルの減弱が病態形成に関与している可能性があると考えている。よってHPPモデル細胞とisogenic controlを骨芽細胞に分化誘導し、細胞外リン酸濃度の違いとリン酸応答遺伝子の発現の解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度に論文投稿を考えており次年度使用額が生じた。論文の英文校正費用、Revise時の追加実験を行うための物品費、また論文投稿費用として使用する予定である。
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