研究課題/領域番号 |
22K07849
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
高山 勝平 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50883162)
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研究分担者 |
松田 修 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00271164)
岸田 綱郎 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00370205)
古川 泰三 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員講師 (20515291) [辞退]
文野 誠久 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (40405254)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 横隔膜ヘルニア / バイオシート / ダイレクトリプログラミング / 筋芽細胞 |
研究実績の概要 |
横隔膜ヘルニア(CDH)は骨格筋欠損に起因する先天性疾患の一つである。治療方針の画一化により生存率は格段に上昇してきたが、横隔膜欠損孔が大きい中等症~重症例の場合は人工物を用いた修復術が必要であり、胸郭変形や側彎、再ヘルニアなどの合併症につながる事があり横隔膜の再生医療は小児外科学において重要なテーマである。 我々はこれまで、ダイレクトリプログラミング法を用いてヒト線維芽細胞にMyoDとLmycを共導入することでヒト筋芽細胞(dMBs)を誘導できること、次いで三次元培養して分化させることで電気刺激に応じた収縮能をもつことを報告した。さらに現在、ナノゲルから作成した3D scaffoldを用いてマウス腹壁欠損モデルへの移植実験を繰り返し、組織学的検討を行っている最中である。本研究では、ダイレクトリプログラミングによる骨格筋細胞再生と生体内組織形成技術によるバイオシートを組み合わせることで、強度と成長性を担保した「成長する骨格筋シート」を作成し、マウスCDHモデルへの移植を行うことを目標としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以前から繰り返し行っているバイオシート作成については、C57BLマウスの背部皮下に長径5mm長さ20mmのシリコンチューブを埋入し、4週後にチューブを周囲結合組織と共に摘出し、結合組織塊をトリミングすることで作成可能である。またdMBs作成についても6cmdishにHDFを8×10E5個播種し、24時間後にMyoDとL-mycをtransfectionすることで作成可能である。さらに72時間筋芽細胞誘導培地で培養後に、プルランが原料のナノゲルスキャフォールドに播種して培養する。 現在はマウス腹壁欠損モデルへの骨格筋シート移植までは成功している。これは、マウス腹壁に7mmの欠損を作成し、7mm径のバイオシートを6-0PDSで6針を用いて縫合閉鎖し、その直上にナノゲルスキャフォールドに播種したdMBsを接着させるものである。1-2週後に犠死させた標本で骨格筋類似細胞の生着を確認し、免疫染色でも筋特異的であるDesminの発現を確認した。これらの成果は2024年度の小児外科学会総会で発表後、論文投稿予定である。また、同様のダイレクトプラミング手技での誘導腱細胞の作成を開発中であり、誘導筋芽細胞と併せて横隔膜作成に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
マウスCDHモデルの作成を検討中である。マウスの横隔膜欠損を作成する手技については文献的報告がほとんどなく、また致死率が非常に高いことが予期されるので、適当な週数、欠損孔の大きさについてまず検討を行う必要があるため、倫理委員会で審議予定としている。また腹壁と異なり、常に呼吸性に動く部位であるので、移植シートの強度についても検討する必要であり、先の手順で示した横隔膜シートが開発でき次第、強度を測定する方針としている。適切なマウスモデルとシートが開発できれば、腹壁欠損モデルと同様の手技で移植実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の実験では、in vitroからin vivoでヒト線維芽細胞から筋芽細胞への分化誘導を行っており、in vivoにおける移植実験においても免疫染色でも筋特異的であるDesminの発現を確認できたが、昨年計画していたマウスCDHモデル作成や、腱組織への分化誘導実験の着手には至っておらず、それら物品購入がなかったため、次年度使用額として1,441,583円が生じた。 次年度は、これまでの実験結果を発表および論文作成するとともに、マウスCDHモデルへの移植実験を計画しており、動物購入に使用する予定である。また、現行の実験に加え、腱組織への分化誘導も検討しており、試薬購入にも使用する予定である。
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