研究課題/領域番号 |
22K07853
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研究機関 | 日本医科大学 |
研究代表者 |
島 義雄 日本医科大学, 医学部, 教授 (70714765)
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研究分担者 |
根岸 靖幸 日本医科大学, 医学部, 准教授 (50644580)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 胎児発育不全 / 早産 / 自然免疫 / 無菌性炎症 / サイトカイン / アラーミン |
研究実績の概要 |
本研究では、胎児発育不全を無菌性炎症による成人慢性疾患の起点と考える立場から、その機序を検証するために、母体・胎盤・胎児のそれぞれにおいて免疫細胞生物学的な解析を試みる。さらに、反応が展開する過程への介入点を見出すことで、病勢の把握や予防手段の確立に向けた世代間横断的な臨床応用の可能性についても模索することを目的としている。 具体的には、胎児と母体の接点である胎盤、分娩時の状態を示す臍帯血と羊水、そして出生後の新生児の血液・尿などを臨床試料としてアラーミンと各種免疫細胞の活性状態を分析し無菌性炎症の局在と程度を検証、さらにそれらを以下の検討から胎児発育不全に基づく早産あるいは低出生体重児の予後と対応させることを計画している。 現時点では早産児における出生直後の炎症状態を、児末梢血を用いてその解析を行なっている。出生直後の末梢血に存在する各免疫細胞群(CD8+ T細胞、CD4+ T細胞、natural killer (NK)細胞、invariant natural killer (iNKT)細胞、制御性T細胞、Th17細胞、樹状細胞(DC1/DC2)、マクロファージ(M1/M2)およびこれらの活性化マーカー、脱顆粒マーカー、共刺激因子の発現を検索している。ここまで、胎児発育不全に特徴的な因子は抽出されていないが、新生児血清中の亜鉛濃度と児炎症状態が逆相関することが見出されており、早産児における抗炎症作用を有する亜鉛の重要性が示唆されている。今後サイトカイン、炎症誘導性を有するアラーミンの検索、羊水、胎盤の検索を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現時点で、本研究は早産児の出生直後末梢血の細胞解析を中心に遂行されている。子宮内発育不全に関する因子は現在認められていないものの、血清亜鉛濃度との相関が見出されている。具体的には、正期産に比して早産では出生後の血清亜鉛濃度が高いことが示されたものの、亜鉛濃度が高値な症例では、マクロファージのM2偏向、樹状細胞のDC2偏向が認められており、亜鉛が早産児の過剰炎症状態を抑制しているのでがないかと推察している。今後症例を増やして、胎児発育不全や妊娠高血圧腎症、絨毛膜羊膜炎などとの関わり合いを明らかにしていく。 さらに羊水、胎盤についても今後の検索予定であり、早産児の炎症状態をさまざまな検体を用いて明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
ここまで早産児の出生直後末梢血の免疫細胞解析では、胎児発育不全に特徴的な因子は抽出されていないものの、新生児血清中の亜鉛濃度と児炎症状態が逆相関することが見出されており、早産児における抗炎症作用を有する亜鉛の重要性が示唆されている。今後は同一検体において、炎症性サイトカイン(IL-1β、TNFα、IL-6、IL-12など)、抗炎症性サイトカイン(IL-10、TGFβ)の測定を予定しており、胎児発育不全または亜鉛濃度との相関性を模索していく予定である。さらに、羊水中の免疫細胞の解析について現在予備実験、条件設定を行なっている。さまざまな検体を用いて、早産児の炎症状態を評価し、胎児発育不全、亜鉛濃度およびその他妊娠合併症(妊娠高血圧腎症、絨毛膜羊膜炎など)との関わり合いを明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用抗体の適正量調整、また器具の滅菌、再利用など実験結果に影響しない範囲での節約を行い、結果次年度使用額が生じたと思われる。
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