研究課題/領域番号 |
22K07862
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
田中 完 弘前大学, 教育学部, 教授 (50271820)
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研究分担者 |
津川 浩二 弘前大学, 医学研究科, 助教 (10447112)
今泉 忠淳 弘前大学, 医学研究科, 教授 (90232602)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 腎尿細管上皮細胞 / Toll様受容体3 / 炎症性ケモカイン / 腎糸球体内皮細胞 |
研究実績の概要 |
①ヒト培養腎糸球体内皮細胞 (GECs)で Toll様受容体3 (TLR3)を介した抗ウイルス免疫応答のエフェクター蛋白interferon-stimulated gene 20 (ISG20)の発現と腎局所での炎症への関与を検討した。ISG20の発現は TLR3依存性であり TLR4,TLR7及び TLR9は関与しなかった。ISG20の knockdownは炎症性ケモカイン CX3CL1 (fractalkine)の発現を抑制したが CXCL10 (IP-10)の発現は抑制せず選択的な関与が示された。腎生検組織では,ISG20の発現は増殖性ループス腎炎で有意であった。以上から,ISG20は増殖性ループス腎炎の炎症病態に関与しており新知見となった (Karasawa T, et al. Ren Fail 2023; 45: 22248990)。 ②ヒト培養腎尿細管上皮細胞 (RTECs)でのTLR3を起点とするISG56の発現と腎局所での炎症への関与を検討した。既報のように RTECs上でTLR3のアゴニストであるpoly-ICによりISG56,CXCL10/IP-10の発現を誘導し,qRT-PCR法で確認した。さらにRNA干渉法にてIFN-β,ISG560をノックダウンし,CXCL10の発現をqRT-PCR法で確認した。RTECs上でのISG56発現は,poly-ICにより時間,濃度依存性に誘導された。IFN-βの knockdownで,poly-ICにより誘導されたISG56,CXCL10は抑制された.さらにISG56の knockdownで,poly-ICにより誘導されたCXCL10は抑制された。RTECsにおいて,ISG56はTLR3を起点としたCXCL10の産生を選択的に制御している可能性がある.ISG56は腎如意細管間質の炎症病態に関与する CXCL10産生メディエーターとしての役割が想定され, TLR3/ISG56経路の制御は腎炎での新規治療法の候補となる可能性がある (Tachizawa M et al. FEBS OpenBio 2024, in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎糸球体内皮細胞を用いた実験系では,これまでの成果に加えて TLR3を起点とする炎症経路群に介在する分子群,抗ウイルスエフェクター蛋白interferon-stimulated genes 20 (ISG20)の詳細な役割を示した。今後,これらの介在分子群の制御を用いた糸球体腎炎の新規治療法開発への足掛かりとしたい。 一方,腎尿細管間質変化は腎炎の慢性化にともなう予後不良因子であるが,その制御に関しては残された課題は多い。 腎尿細管上皮細胞を用いた TLR3を介した炎症経路群の検討結果から腎糸球体内皮細胞と同様に ISGsの介在が示された。今回は,ISG56の意義を明らかとしたが介在分子の制御と腎間質線維化への関わりの詳細を検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
腎尿細管上皮細胞での TLR3を介した ISGsの制御と腎間質線維化に関わる transforming growth factor-β (TGF-β)を代表とする分子群への影響を細胞実験と腎生検で得られた腎組織を用いた免疫染色で検討し,新規の治療法開発への足掛かりとする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
成果発表のための論文査読に時間を要したため APC請求が次年度へ持ち越し年度内の予算執行に残金が生じたものである。
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