研究課題/領域番号 |
22K07864
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
小金澤 紀子 群馬大学, 大学院医学系研究科, 助教 (90643114)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 超解像顕微鏡 / STED / ASD |
研究実績の概要 |
神経発達障害の一種である自閉症スペクトラム障害 (ASD) は100人に1.6人の小児が罹患するとも言われており、その膨大な患者数が社会的な問題となっている。ASDは社会的コミュニケーション障害と強いこだわりなどの特徴的症状を示す疾患である。ASDの効果的な予防法と診断法、そして治療法の開発が喫緊の課題であり、これらの開発のためにはASDの病態を理解する必要がある。ASD発症の原因は脳神経ネットワークの機能異常であると考えられてきたが、不明点が多い。ASDの原因遺伝子・関連遺伝子として、シナプス構成タンパク質をコードする遺伝子が多数報告されている。シナプスは脳神経ネットワークで情報処理をする中継点で、その形態や数の変化が脳高次機能の制御に重要と考えられている。シナプスの形態や数の異常がASD発症の原因である可能性が考えられているが、数種類のASDモデルマウスに共通したシナプスの形態や数の表現型は見出されていない。本研究では、シナプスの形態と数の解析に適した最先端の超解像顕微鏡である3D-Stimulated Emission Depletion (3D-STED)顕微鏡を用いて数種類のASDモデルマウスの解析を行う。各発達時期で3つの脳領域を系統的に解析することにより、これらのASDモデルマウスに共通したシナプスの形態や数の変化を見出す。 発達障害モデルマウスを用いて、3D-STED顕微鏡による解析法の最適化を試みた。シナプス数定量方法を改良し、現在さらに複数種類のASDモデルマウスの解析が進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、シナプスの形態と数の解析に適した最先端の超解像顕微鏡である3D-STED顕微鏡を用いた解析を進めている。シナプスの数の解析方法を確立させるため、発達障害モデルマウスを用いて解析法の最適化を試みた。海馬CA1とCA2領域に着目し、シナプス数の正確な定量法を確立させ、その成果を発表した。この方法を用いて、さらに複数種類のASDモデルマウスの解析が進行中である。また、画像データの解析用にAI画像解析ソフトウエアを導入し、解析法のさらなる改良を進めている。シナプスの形態解析方法を確立させるために、脂質修飾型GFPを発現させた脳切片を用いた解析を行っている。その過程で、組織固定法を工夫する必要があることが分かってきたので、現在固定法の最適化を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
現在進行中の解析はいずれも、ヒトの思春期から若年成人期に相当する週齢の動物を使用している。本研究の目的の一つに、各発達時期でのシナプス解析を試みることを挙げている。今後は、ヒトの新生児から学童期に相当する週齢の動物の解析も進めていく。また、着目する脳領域として海馬だけでなく、扁桃体や体性感覚野も検討している。これまで主に、興奮性シナプスの解析を進めていることから、抑制性シナプスの解析方法についても検討を始める。
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次年度使用額が生じた理由 |
シナプス数の正確な定量方法の改良に、予定していたよりも時間がかかった。解析領域を広げていくこと、抑制性シナプスについても検討を始めること、などから今後は必要な抗体の種類が増えていくことが予想される。また、若い時期の動物が必要になることから動物の管理費等も増える。今後はこうした分に充てていく。また、画像解析ソフトウエアを導入したことで解析が大幅に進む可能性もあり、その場合は解析補助のための人件費に充てる。
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