研究課題
発生初期に出現する神経堤細胞をニワトリ胚、またはウズラ胚で焼灼除去すると心臓奇形の1つである動脈幹遺残を作出できる。心臓奇形を生ずる心臓神経堤postoticとその前方に位置する神経堤preoticはそれぞれ心臓形成に対する役割が異なり、後者のpreotic神経堤は特に心臓冠血管形成に関与する。マウスWnt1-Cre;R26R-EYFP胎仔で神経堤細胞とマクロファージマーカーF/80を使って検討したところ、神経堤細胞分布の豊富な部位にマクロファージ分布を認めた。しかし、Wnt1-系譜神経堤細胞はマクロファージマーカーを発現しないことから、神経堤細胞は心臓マクロファージには分化しないと考えられる。ニワトリ胚でpreotic、postotic両方の神経堤を切除すると心臓奇形と同時に流出路周辺の冠血管とリンパ管に異常を認め、流出路マクロファージKUL01数が激減した。しかし、preotic神経堤を切除すると頸部形態の異常はあるもののマクロファージ数は変化なかった。これはpostotic神経堤による代償作用と考えられる。マクロファージ分化と分布に神経堤細胞が関与するかどうかをマウスWnt1-Cre;R26R-EYFP心臓の神経堤を使って、scRNA-seq、scATAC-seq分析したところ、神経堤細胞の一部がCsf1やCcl2などのマクロファージ誘導因子を発現していた。10xVisiumを用いて遺伝子プロファイルと空間トランスクリプトーム解析したところ、半月弁間質細胞部分にSall3転写因子クラスターを認めた。これらのことから、神経堤由来弁間質細胞は流出路の遠位クッションでCsf1とCcl2のようなマクロファージ産生因子を分泌することによって、造血心内膜細胞からのマクロファージ分化とその後のコロニー形成を刺激し、半月弁形成に寄与する可能性があることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究2年目でおおよその結果を予測できるようになった。
今年度は最終年度のため論文執筆に必要なデータの集積とまとめを実施する。
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eLife
巻: 12 ページ: e83005
10.7554/eLife.83005