研究課題/領域番号 |
22K07879
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
鈴木 禎史 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 神経研究所 疾病研究第二部, 科研費研究員 (70465003)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 髄鞘形成不全 / 病態解析 / 幹細胞分化 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、PLP1遺伝子重複によって起こる先天性大脳白質形成不全症の代表的な疾患であるPelizaeus-Merzbacher病(PMD)の新規病態解明を行うことである。 疾患特異的iPS細胞を用いて、①病態モデル構築、②iPS細胞から分化誘導したオリゴデンドロサイト前駆細胞(OPCs)とオリゴデンドロサイト(OLs)を用いて、PLP1重複変異によって起こる細胞・分子病態について、ミトコンドリア機能障害に関連した解析を進めた。 ミトコンドリア障害によって起こると仮定した代謝異常を検証するために、オルガノイドサンプルを用いたメタボローム解析を行うことができた。現在詳細な解析中であるが、予想とは反してコレステロールやコレステロールエステルの合成量に関して、コントロールと大きな差が無いことがわかった。 昨年に引き続き、オルガノイドを用いてOLsの分化効率について解析を続けた結果、PMD-OLsの細胞数の減少と細胞形態異常(Processの長さや分岐数の低下)を検出した。これまでの解析結果から、OPCsの段階で細胞形態異常が起きており、OPCs-OLsの分化期間にミトコンドリアROSと細胞内ROSが上昇することを確認してきたことから、ROSが病態候補の一つであると仮定し、ROSのインヒビターを用いた解析を行った。ROSの上昇がみられるオルガノイド培養90日にNAC(N-アセチルシステイン)を継続的に添加し、その30日後に解析した結果、NAC非添加群と比較してNAC添加群のOPCsではProcessの長さや分岐数の改善がみられた。さらに、一部のOLsにおいても同様の改善が見られ、神経軸索に向かって伸長したProcessを検出することができた。今回の結果から、細胞形態異常の上流にOPCsから上昇するROSが働いている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、使用機器の移設などで実験を進めるにあたって制限がある期間があった。そのため、昨年度と同様の解析や準備していた実験については進めることができたが、ミトコンドリアの機能や分解に関する実験については、予備検討しか実行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
PMD-OLsの分化成熟度や髄鞘化について検証し、PMDの正確な病態像を捉える。同時に、OPCsから上昇するROSが細胞病態として寄与するか証明するために、ROSインヒビターを用いて髄鞘化の改善効果を確認していく。 PLP1重複変異によって起こると仮説するミトコンドリア機能異常について、OPCsのどの段階でどのような異常が引き起こされるか検証し、発症機序を明らかにしていくことを計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
一部の実験期間が制限され、試薬購入のタイミングが次年度にズレたため。 購入希望試薬の品薄と輸入期間の延長があり、年度内に購入することが難しかったため、今年度に購入を考えております。 ミトコンドリア機能解析の条件検討で使い込んだ試薬の補填に使用いたします。
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