研究課題/領域番号 |
22K07902
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
今留 謙一 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 高度感染症診断部, 部長 (70392488)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | EBウイルス / 重症蚊刺アレルギー / 慢性活動性EBウイルス病 / 造血幹細胞移植 / 悪性腫瘍 |
研究実績の概要 |
皮膚症状を示すウイルス感染症は多く存在する。しかし、悪性リンパ腫まで進行するものは多くない。多くの成人が既感染であるEBウイルス(EBV :Epstein-Barr virus)が原因で発症する重症蚊刺アレルギー(HMB :Hyper mosquito bite allergy)は、造血幹細胞移植でしか根治できない悪性リンパ腫に属する慢性活動性EBV病(CAEBV :Chronic active EBV disease)に進行する場合がある。HMBは小児期に発症する場合が多く、通常見られる蚊刺後にの発赤腫脹だけでなく、蚊刺後に水泡、壊死、潰瘍を形成し発熱等の全身症状を呈するのが特徴で、患者のQOLが著しく損なわれる。HMBを通常の蚊刺症状としCAEBVへ進行後の対応の遅れから救命できなかった報告が毎年ある。これはHMBが稀少疾患であることだけでなく、HMBの発症メカニズムがほとんど明らかとなっていないため治療法や移植時期の判断基準も定まっていないことが原因の一つである。患者検体を用いた感染細胞と感染細胞に対する免疫細胞の分子生物学的・免疫学的・遺伝学的解析を実施しHMB発症関連因子の同定と重症蚊刺アレルギー発症ヒト化モデルマウスを作製し病態発症機構の解明を目指す。本研究では、重症蚊刺アレルギーの病態発症機構を解明するとともに新規標的分子の同定による治療薬・バイオマーカーの開発を最終目標とする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナの影響もあり重症蚊刺アレルギーでの来院が少なく、通常も病態進行診断のため2ヶ月に1回の来院が普通だが、重症蚊刺アレルギー状発症時のみの来院となり、残余検体利用の機会が減ったためやや遅れた進捗となっている。新型コロナの影響で外での生活時間がほとんどない子が多く、蚊刺自体減少しているのも症例減少の原因と考えられる。2症例が重症蚊刺アレルギー検体であることを最終診断した。臨床検体において2症例に共通するのは炎症性サイトカインの以上産生と末梢血中のEBV-DNA量の高値と蚊刺による広範囲の発赤腫脹であった。検査後の残余検体からヒト型EBV重症蚊刺アレルギーモデルマウスの作製は無理であったため、微量残余検体(全血)からPBMC分離し、感染細胞株樹立を進め2細胞株(NK細胞タイプとCD4タイプ)樹立に成功した。2株ともEBV遺伝子タイプはLatency2型であった。2細胞株でのin vitro実験においては増殖や薬剤抵抗性(抗がん剤)などに大きな差はなく、IFN-γ、IL10、TNF-αなどの炎症性サイトカイン産生能でも大きな差はなかった。現在、マウスに感染細胞を移植し腫瘍形成や炎症状態などの検討をin vivoで進めている。
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今後の研究の推進方策 |
最終的には重症蚊刺アレルギー検体PBMCをNOGマウスに移植し、ヒト型重症蚊刺アレルギーモデルマウスを作製した後、蚊分泌物質を皮下に接種し患者で見られる発赤腫脹や潰瘍の形成について検討する。発赤腫脹や潰瘍の形成がごく僅かであってもマウス末梢血中のEBV感染細胞の増殖及び腫瘍形成は見られることが予想されるため、継時的に末梢血EBV-DNA量の解析とFCM解析による感染細胞と非感染免疫細胞の動体について詳細に計測していく。目標としては腫瘍形成へ進行することを判定できるバイオマーカーと治療標的分子の発見を目指す。
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