研究課題
輸血療法は重要な支持療法であるものの、様々な副反応が発生しうることが課題である。副反応の中でもアレルギー性輸血副反応(ATR)は、特に発症頻度が高く、また重篤な症状を呈する可能性がある。ATRの発症機序はまだ完全には明らかにはされていないものの、①患者側因子と②血液製剤側(またはドナー側)因子の双方の条件がそろうことで発症すると考えられている。さらに我々は、食物アレルギーや花粉症等のアレルギー素因を保有している症例においてはATRの発症頻度が高いことや、ATRの原因製剤によって患者の好塩基球が活性化していること等をこれまで報告してきた。これらは、ATRがIgEを介するⅠ型アレルギーによって発症している可能性を示す結果と考えられる。そこで本研究はATRの発症に関連しうる患者側、製剤側双方の因子を更に明らかとすることにより、ATR発症機序の全貌を明らかとし、より安全な輸血療法を目指すことを目的とした。該当年度においては、製剤中に含まれるATRの原因に重点をおいて検討を継続した。その結果、花粉の飛散時期に一致して血小板製剤中に花粉由来抗原が含有されている可能性を見出した。また、食物アレルギー症例の好塩基球は、該当食物を摂取したドナーの血清によって活性化されることも明らかとなった。これらのことから、花粉や食物に対してアレルギーを有する症例に、花粉や食物由来抗原を含有した血液製剤を輸血することによってATR発症が引き起こされる可能性が推察された。
2: おおむね順調に進展している
ATRと花粉および食物由来抗原の関連性を検討し、それぞれ学術誌に報告することができたため。
ATRの発症要因について引き続き検討を継続するとともに、ATRの解析方法についても検証を行う。
当初計画で見込んだよりも安価に研究が進んだため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は令和6年度請求額と合わせて消耗品費として使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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