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2022 年度 実施状況報告書

臍帯血移植細胞の脳内浸潤からみた脳性麻痺治療メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K07915
研究機関高知大学

研究代表者

津田 雅之  高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 教授 (90406182)

研究分担者 都留 英美  高知大学, 教育研究部医療学系基礎医学部門, 助教 (70380318)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード臍帯血 / 脳性麻痺 / 血液脳関門
研究実績の概要

脳性麻痺に対する新規治療法として本学医学部附属病院で実施されている自家臍帯血移植治療の治癒メカニズムを明らかにするため、新生仔脳虚血再灌流障害モデルを改良した独自の脳性麻痺モデルを開発し解析を行ってきた。生後9日齢の免疫不全マウスを用いてモデルマウスを作製し、3週間後にヒト臍帯血細胞を静脈投与すると、内在性の神経幹細胞が賦活化し、分化した神経前駆細胞は増殖しながら損傷部位に誘導されることが明らかとなった。移植細胞の脳実質内への浸潤は、神経幹/前駆細胞の賦活化による脳障害の改善に向けた最初の重要なステップと考えられる。血管に投与された臍帯血細胞が血液脳関門を超えて、どのように脳実質内に浸潤するのかを調べることにした。
血液脳関門の破綻の状態を調べるため、脳損傷24時間と3週間後の脳性麻痺モデルマウスの血管にエバンスブルーを投与し、脳実質内への漏出量を定量した。脳損傷24時間の急性期では、障害側で顕著な漏出が観察されたが、3週間後の慢性期においては、漏出は観察されるもののその程度は低く、正常側と比較して有為な差は認められなかった。次に、血液脳関門の形態を解析するため、ペリサイトとアストロサイトの免疫染色を行った。ペリサイトのマーカーとしてPDGFRβを用いた。脳損傷24時間後の障害部位付近にはペリサイトのシグナルは観察されなかったが、3週間後には観察されるようになった。さらに、脳血管を取り囲むアストロサイトの足突起のマーカーであるアクアポリン4と血管を可視化できる蛍光標識トマトレクチンを用いて、脳切片上でそれらの局在を調べた。その結果、脳損傷3週間後においても共局在は観察されず、血管は足突起に覆われない状態で存在していた。これらのことから、臍帯血細胞の移植時期である脳損傷3週間後の慢性期における血液脳関門は急性期から回復しつつあるものの、その破綻は続いていることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

血液脳関門の形態や機能を解析するため、ペリサイトやアストロサイトの他に、基底膜(コラーゲンⅣ)や血管内皮細胞のタイトジャンクション(claudin-5、occludin)の免疫染色を進めているが、条件検討中であり結果が得られていない。また、脳性麻痺モデルマウス作製や臍帯血細胞採取が計画よりも少なかったため、臍帯血細胞移植後の血液脳関門の形態も解析するまでには至らなかった。

今後の研究の推進方策

今年度結果が得られなかったタイトジャンクションや基底膜などについて、免疫染色やwestern blot法を用いて調べる。さらに、造影剤を用いたMRIによる漏出観察、電子顕微鏡による血液脳関門の構造観察も行い、急性期と慢性期における血液脳関門の透過性や形態、機能の違いを見出す。
また、脳性麻痺モデルマウスに臍帯血細胞を移植した後の血液脳関門の評価や、移植細胞を標識(PKH26や蛍光分子など)し、脳実質内に浸潤している細胞を観察することで、脳内での局在や浸潤している細胞について解析する。

次年度使用額が生じた理由

脳性麻痺モデルマウスへの臍帯血投与実験が計画通りに進まず、臍帯血細胞の培養液や培養器具などの購入を翌年度に持ち越したため、その購入費とする。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件)

  • [雑誌論文] Safety and feasibility of autologous cord blood infusion for improving motor function in young children with cerebral palsy in Japan: A single-center study.2022

    • 著者名/発表者名
      Kikuchi H, Saitoh S, Tsuno T, Hosoda R, Baba N, Wang F, Mitsuda N, Tsuda M, Maeda N, Sagara Y, Fujieda M.
    • 雑誌名

      Brain and Development

      巻: 44 ページ: 681-689

    • DOI

      10.1016/j.braindev.2022.08.004.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] NF90-NF45 is essential for β cell compensation under obesity-inducing metabolic stress through suppression of p53 signaling pathway.2022

    • 著者名/発表者名
      Lai S, Higuchi T, Tsuda M, Sugiyama Y, Morisawa K, Taniguchi T, Sakamoto S.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 8837

    • DOI

      10.1038/s41598-022-12600-y.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Sulfatide with ceramide composed of phytosphingosine (t18:0) and 2-hydroxy FAs in renal intercalated cells.2022

    • 著者名/発表者名
      Nakashima K, Hirahara Y, Koike T, Tanaka S, Gamo K, Oe S, Hayashi S, Seki-Omura R, Nakano Y, Ohe C, Yoshida T, Kataoka Y, Tsuda M, Yamashita T, Honke K, Kitada M.
    • 雑誌名

      Journal of Lipid Research

      巻: 63 ページ: 100210

    • DOI

      10.1016/j.jlr.2022.100210

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 17O-MRSによる慢性期脳性麻痺モデルマウスの脳内17O水の観測2023

    • 著者名/発表者名
      津田正史, 津田雅之, 中山登, 中岡渓, 中岡茂
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会
  • [学会発表] 17O-MRSによる慢性期脳性麻痺モデルマウスの脳内17O水の観測2022

    • 著者名/発表者名
      津田正史, 津田雅之, 中山登, 中岡渓, 中岡茂
    • 学会等名
      第50回日本磁気共鳴医学会大会
  • [学会発表] NF90-NF45はp53シグナル経路の抑制を介し肥満誘導代謝ストレスによる膵β細胞の代償性肥大を引き起こす2022

    • 著者名/発表者名
      Sylvia Lai, 樋口琢磨, 津田雅之, 杉山憲康, 森澤啓子, 坂本修士
    • 学会等名
      第45回日本分子生物学会年会
  • [学会発表] A novel subpopulation of B1 B cells whose secretion of natural antibodies is suppressed by complexin 2.2022

    • 著者名/発表者名
      都留英美, 茂川拓紀, 溝渕雅章, 津田雅之
    • 学会等名
      第51回日本免疫学会学術集会

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公開日: 2023-12-25  

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