研究課題
二分脊椎症は先天性の異常である。本邦では神経組織が露出した状態で生まれてくる開放型の脊髄髄膜瘤、および病変部が皮膚により閉鎖された状態で生まれてくる潜在性二分脊椎(脊髄脂肪腫など)の双方を合わせ、年間1000出生に1名前後の患者が生まれていると推測される。特に、脊髄髄膜瘤は脊髄の異常に伴う下肢の運動機能障害と排尿排便機能障害にとどまらない。その多くに、発達遅滞を引き起こす水頭症や、呼吸や嚥下障害を来す原因となるキアリⅡ型奇形を合併し、生涯にわたる医療ケアを要する。日本においては指定難病118番に指定されている。母体による葉酸の摂取が二分脊椎症の発生率を低減させることは知られている。しかしながら、推奨された量および方法で葉酸を摂取しているにも関わらず、二分脊椎症の子供が生まれてくることがある。それゆえに、葉酸に代わる予防法や根治療法の開発が求められている。先行して実施した52名の二分脊椎症の患者の全ゲノム解析により、8種類の遺伝子がこの疾患に関わっている可能性がある事が判明した。本研究では、二分脊椎症の患者の全ゲノムを解析し、1)遺伝子をノックアウトした動物モデルでは二分脊椎症の原因となることが分かっている遺伝子、2)これまでヒトでは原因となる変異が特定されていない遺伝子、3)今回の検討で親子が同じ疾患を持つ例について、親子ともに変異があるもの、4)他の症例にも変異がみられる遺伝子、という条件を満たした転写因子を見いだした。
2: おおむね順調に進展している
二分脊椎症の原因遺伝子の候補である転写因子を明らかにした。
患者の遺伝子変異を導入した細胞を作製し、転写活性を評価する。
予定よりも少ない試薬を用いて効率よく実験を遂行できたため、次年度使用額が生じた。消耗品費(分子生物学用試薬)に充当する。
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