研究課題/領域番号 |
22K07926
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
松本 浩 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (00536229)
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研究分担者 |
大澤 郁朗 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (30343586)
鈴木 郁郎 東北工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (90516311)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | DNM1L / ATP産生 / 神経細胞 / 細胞外フラックスアナライザー / ミトファジー |
研究実績の概要 |
Dynamin 1-like (DNM1L)は、細胞内のミトコンドリア分裂を制御するDRP1をコードする核遺伝子である。この遺伝子のヘテロ接合性変異により、ヒトにおいて重度の中枢神経症状を呈することが報告されている。私たちが経験した症例においても、乳児期に重度のてんかん性脳症を伴うLeigh症候群を生じ、不幸な転帰をとった(Clin Genet 2016)。ミコトンドリア分裂の異常により生じる、重篤な中枢神経障害の機序について、患者由来iPS細胞を用いて明らかにすることを目的として一連の研究を行った。 これまでの研究では、iPS細胞から神経細胞へ分化誘導を行い、神経細胞においてミトコンドリアのATP産生能の評価(細胞外フラックスアナライザー)を行った。患者由来の神経細胞では、コントロール細胞に比べて酸素消費速度の低下を認め、細胞におけるATP産生能が低下していることが示唆された。またこれとは別に、ATP濃度依存性に蛍光を示す色素染色によるATP産生能の評価を行ったが、これについては患者由来細胞とコントロール細胞で有意な差は認められなかった。 ミトコンドリアは細胞内で品質管理を受けており、酸化ストレスなどにより機能障害を生じたミトコンドリアは、ミトファジーと呼ばれる細胞内消化によりリサイクルされると考えられている。この現象を蛍光顕微鏡下で観察したところ、患者由来細胞においてはミトファジーの低下が生じていることが観察された。 以上の結果から、患者由来神経細胞ではミトコンドリアの機能や品質管理に障害が生じており、その結果として神経細胞の機能維持に問題が生じることが予想された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
神経細胞におけるミトコンドリア機能について、酸素消費速度、ATP産生能、ミトファジーおよび細胞活動電位など多面的に評価することを計画していた。2022年12月に研究代表者の異動があり、新しい環境において研究を進めるためのセットアップ、研究チームの編成などに時間を要している。これまでのデータのまとめを行い、学会・論文発表に向けて準備を進めていく。
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今後の研究の推進方策 |
神経細胞における損傷ミトコンドリアのミトファジーの評価、ならびに微小電極アレイを用いた神経細胞の活動電位の評価を行うため、計画および予備実験を行っている。ミトファジーの評価については、mitophagy dyeを用いたコントロールおよび疾患由来細胞の差を蛍光顕微鏡による観察で評価しているが、定常状態ではミトファジーの差を見いだすことが難しい。脱共役剤などの化合物による細胞負荷を与えミトファジーを誘導するなどの手法を試みており、疾患由来細胞におけるミトファジーの低下を証明しつつある。 神経細胞の活動電位については、CytoView MEA24, Maestro Edge (AXION Biosystems)のシステムを用いて、神経活動電位および神経細胞間の同期発火の測定を試みている。定常状態でのコントロール、疾患由来細胞での測定を行うと共に、細胞負荷を与えた状態で比較することで、疾患由来細胞における細胞機能低下を証明する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進展に若干の遅れがあり、実験に関する支出が少なかった。2024年度においてはこれまでの研究過程における問題点を確認し、予定された研究を進展させるとともに、これまでに得られた研究成果をまとめ発表の準備を進めていく。
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