研究課題/領域番号 |
22K07928
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
河合 利尚 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 小児内科系専門診療部, 診療部長 (20328305)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 原発性免疫不全症 / 慢性肉芽腫症 |
研究実績の概要 |
原発性免疫不全症(Inborn Errors of Immunity:IEI)では感染症だけでなく、それ以外に自己炎症疾患との関連も示唆されている。乳児期早期発症の炎症性腸疾患(Very Early Onset Inflammatory Bowel Disease:VEO-IBD)では、すでに20疾患以上のIEIが原因となることが報告された。これまで、IBDで腸内細菌叢は、IBDによる変化、IBD疾患活動性との関連、IBD誘導因子など報告されているが、IEI関連IBDでの報告はない。IBDの原因となるIEIには、特定の腸内細菌を殺菌できない疾患も含まれる。 本研究では、VEO-IBDを発症するIEIのうちカタラーゼ産生菌を殺菌できない慢性肉芽腫症(Chronic Granulomatous Disease: CGD)患者を対象として、腸内細菌叢を検討し、CGD関連IBDの病態で中心的役割を果たす免疫細胞の機能解析を行う。2022年度は、CGD患者を対象として免疫学的評価(末梢血リンパ球サブセットによる活性化CD4・CD8、Central memory T細胞、Effector memory T細胞など、好中球機能評価)および腸内細菌叢を解析した。腸内細菌叢は、既報告に従い細菌16SrDNA領域をPCR法で増幅し、PCR産物を制限酵素で断片化して検出された断片のパターンから腸内細菌叢の割合を解析した。 今後、CGD、CGD-IBD症例および健常者(健常コントロール)のデータを蓄積し、最終的にクラスター解析および多様性解析を行うことで、CGDやCGD-IBDの疾患特異的な腸内細菌叢を検証できると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、3年間の研究期間を予定しており、2022年度は1年目となる。CGDの免疫評価および腸内細菌叢の検討に関連する研究を遂行するために、当センター倫理審査委員会を受審し、臨床研究(研究課題「先天性免疫不全症の診断ならびに病態解析に関する研究」)の継続について承認を得た。 CGDは細菌と真菌に易感染性を示すため、感染予防の目的で、ほぼ全例がST合剤とイトリコナゾールを連日服用している。そのため、感染予防を開始する前の腸内細菌叢を評価することは困難であった。さらに、CGDは感染症を繰り返すため、しばしばST合剤以外の抗生剤内服や静注治療が行われるが、これらの薬剤は一時的に腸内細菌叢に影響する可能性が高い。本研究では、ST合剤以外の抗生剤が投与されていない期間に実施するため、検体を採取する時期が制限される。効率的にデータを集積するために、便検体と血液検体を採取するスケジュールを調整し、研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
CGDの国内患者数は約300名で、発症割合は16万人あたり約1人と推定される希少疾患であるため、検体数は限られるが、当センターで診療中のCGD患者を対象にすることで、一定の検体データ蓄積が可能と推測される。2022年度は、腸内細菌叢、リンパ球サブセット、好中球機能解析の実験系を樹立し、臨床検体を解析した。2023年度以降も、これらの実験系を用いて解析を進めデータを集積する。本研究期間中にCGD-IBDを発症する症例がいれば、CGD-IBDとCGD、腸内細菌叢の関連について検討する。また、年齢とともに腸内細菌叢が変化することを指摘した論文も散見されるため、同一症例から複数回の検体採取を行う。感染症を発症した症例では、特に、抗生剤投与前後で腸内細菌叢へ与える影響についても検討する予定である。本研究を継続する上で、患者検体を適切に取り扱うことが重要と考える。 今後も、研究実施計画書を遵守し患者への説明と同意取得を行い、研究倫理に配慮して研究を継続する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究では、患者検体を用いた解析を行っている。コロナ禍の影響で患者の来院が少なかったため、2022年度の患者検体数が予定よりも少なかった。試薬の使用期限も限られているため、解析に必要な試薬の一部を、2023年度に追加で購入することに予定を変更した。2023年度は、患者解析に用いる試薬を購入し、解析を継続する計画である。
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