研究課題
心筋緻密化障害は心筋層が肉柱層と緻密層の2層から成る構造を特徴した予後不良の遺伝性の心筋症である。新しい治療薬の開発は喫緊の課題であり、そのため には、詳細な臨床情報の集積と病態の解明が重要である。本研究では、小児期、とりわけ胎児期から新生児期に多く見出されるMYH7 の遺伝子変異によりその多 様な機能が障害され、心筋緻密化障害が発症するのではないかと仮定し、MYH7 遺伝子変異からMYH7 の機能の多様性を明らかにし、心筋緻密化障害の病態の解明 を目的とした。研究計画として、遺伝子変異導入マウスのMYH7 に基づく形態、生理機能の評価と発現プロファイル解析と遺伝子変異導入マウスのMYH7 に基づく 個体レベルおよび小器官レベルでのメタボローム解析、ミトコンドリア機能の評価、酸化ストレスの評価を行い、複雑代謝系の総合的理解を得る。病態を解明することで、MYH7 の機能の多様性を明らかにし、心筋緻密化障害の創薬研究へ繋ぐ。本研究では、遺伝子変異導入マウスは収縮期機能不全および増強された心臓収縮能を示した。また、イソプレテレノール負荷を受けた遺伝子変異導入マウスは、野生型マウスと比較して心機能が有意に低下し、後に心肥大を示した。これらの観察から、本研究の遺伝子変異導入マウスの所見は、心筋緻密化障害における心筋形態の変化と心機能の低下の過程の一部である可能性が示唆された。また、遺伝子変異導入マウスの基質代謝では、グルコース代謝が抑制され、脂質代謝が増強されていた。心臓収縮は遺伝子変異導入マウスで増強されているが、これは野生型よりも心筋がより多くのエネルギーを必要としていることが示唆された。一方で、遺伝子変異導入マウスではクエン酸回路にリンクされていないことが示唆された。したがって、代謝物解析の結果から、遺伝子変異導入マウスの心筋の代謝が生理的状態から逸脱していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り結果が得られているため。
本研究の遺伝子変異導入マウスの所見は、心筋緻密化障害における心筋形態の変化と心機能の低下の過程の一部である可能性が示唆された。また、遺代謝物解析の結果から、遺伝子変異導入マウスの心筋の代謝が生理的状態から逸脱していることが示唆された。そのため、今後は、バリアントの異なる変異導入マウスを作製し、生理学的研究、代謝学的研究を推し進め、バリアントの違いによるこれらの違いを明らかにし、MYH7の多様性について探求していく予定である。
当該年度は計画は予定通り進行したが、旅費・消耗品の出費が予想より下回った。次年度は消耗品を数多く使用する機能解析を予定している。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (10件) (うち国際学会 3件、 招待講演 5件) 図書 (3件)
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