研究課題
医師主導治験として、新生児ヘモクロマトーシスの退治治療に参加し、本疾患の病態進行を抑制する高用量 IVIG 投与の有効性についての検討を続けている。研究者はすでにわが国における胎児 IVIG 治療のうち5例を実施、治験としては2例を実施した実績を有する。いずれも経過が良好であり、高用量 IVIG が病態発症予防に著効する事実からは、本疾患の発症病態仮説である、アロ抗原感作が重要であることが強く示唆される。本研究では、このアロ抗原を同定し、本疾患の早期診断、治療介入のための病態評価に寄与することを目的として、いくつかの手法を駆使して胎児肝抗原の中の候補となるものの探索を続けている。これまでの研究内容ならび主たる成果は下記の通りである。① Expression array による胎児肝臓特異抗原の探索;・既存の胎児肝組織ならびに成人肝組織の expression array data を比較、胎児肝組織に特異的に発現する抗原を抽出、・胎児肝細胞特異的に発現する抗原を関連文献のarray data より抽出。以上の探索により、現時点で胎児肝細胞表面に胎児期特異的に発現する候補抗原を複数同定② Protein array により母体血清中の存在することが予想されるアロ抗体を網羅的に探索;・小麦胚芽を用いた無細胞系で合成された蛋白アレイに対する血清の反応性を固相系で探索、・上記とは別に、液相系での探索も準備中③ Expression array 分析、Protein array 分析で候補となった公言について、ELISA 系を構築して血清抗体の有無ならびに力価を定量;・すでに複数の候補抗原について ELISA 系での確認作業を施行中である。今後は、最終候補抗原の絞り込みを行い、その結果を受けて母体中抗体の特異性を幅広く検証する段階に移行する。
3: やや遅れている
病態発症に関わる、胎児肝細胞表面に存在することが想定されるアロ抗原の同定ができていない。その理由として、① 同定のためのプロテインアレイ法では候補となる抗原を捉えることができていない可能性がある。このため、本年は液相系も駆使して網羅的解析を加えることとしている。② 胎児肝細胞表面に標的抗原があるとする一般的な仮説に誤りがある可能性も否定できない。この点からも、対象抗原を絞り込まない網羅的解析のデータが重要となる。上記の液相系での解析の進展を期待している。
いくつかの新しい方向を加えて、多面的なアプローチを試みる。明確な、かつ豊富な臨床的なエビデンスがあることから、方法論を駆使することにより何らかのブレイクスルーが得られることを期待する。まずは、一つずつ丁寧にアプローチ可能な課題を解決しながら核心に迫ることを目指す。
研究計画遂行の遅れもあり、次年度に追加の研究を続行する必要が生じた。そのための経費が次年度使用額として計上されている。引き続き研究を発展させるために使用する予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)
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