研究課題/領域番号 |
22K07943
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
三嶋 竜弥 杏林大学, 医学部, 講師 (40317095)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 熱性けいれん / シンタキシン1 / アストロサイト / 抑制性シナプス伝達 |
研究実績の概要 |
本研究では、近年ヒトにおいて、熱性けいれん・てんかん症候群の原因となることが報告されたシンタキシン1B(STX1B)遺伝子による、けいれん発症の仕組み及びその分子機序の解明を目的とする。STX1Bは神経細胞とアストロサイトで機能しており、特にアストロサイトではGABAの再取り込みや神経栄養因子の分泌を制御しいる。このため、アストロサイトの機能不全がけいれん発症に関与している可能性が考えられる。本研究では、STX1B遺伝子改変マウスを動物モデルとして用い、アストロサイトにおけるSTX1Bの生理機能が、抑制性シナプス伝達機能や神経の生存・発達に及ぼす影響を明らかにする。本研究により、アストロサイトにおけるSTX1Bの機能とけいれん発症との関係が解明できれば、新たな治療法や創薬へつながることが期待できる。 本年度は、STX1Bヌルマウスのアストロサイト上で野生型マウスの海馬神経細胞を培養し、抑制性シナプス伝達機能の発達への影響を解析した。その結果、STX1Bヌルマウスのアストロサイト上で培養した神経細胞では、抑制性シナプス伝達機能の発達が遅延していた。また、野生型マウスのアストロサイト上で培養したSTX1Bヌルマウスの神経細胞においても抑制性シナプス伝達機能の発達にも遅延がみられた。一方、STX1Bヌルマウスのアストロサイトで培養しても興奮性シナプス伝達機能の発達に異常は見られなかった。これらの結果は、アストロサイト及び神経細胞のSTX1Bの機能異常が共に神経機能の発達に影響し、けいれん発症に関与することを示唆するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の計画通り、シナプス伝達機能や神経ネットワーク活動に対するアストロサイトの機能解析を行った。 必要とするデータを得ることができ、概ね想定通りの結果を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
アストロサイトで発現するシンタキシン1Bが抑制性シナプス伝達の発達に関与することが明らかになったため、次年度以降の研究計画として、(1)けいれん発症に対する神経細胞とアストロサイトのSTX1Bの機能の解析を行う。そこで、アデノ随伴ウィルス(AAV)ベクターを用いてSTX1B+/-マウスの神経細胞もしくはアストロサイト特異的にSTX1B遺伝子を導入し、レスキュー実験を行う。STX1B遺伝子を新生仔マウスに導入し、幼若期(生後10-11日目)に熱性けいれん誘導実験により、けいれん感受性を解析する。成体マウスでも同様に神経もしくはアストロサイト特異的にSTX1Bを導入し、薬物誘発けいれんに対するけいれん感受性への影響を解析する。また(2)シナプス間隙GABA濃度に対するシナプス前神経とアストロサイトの相互作用を解析する。各遺伝型(野生型・STX1B+/-・STX1B-/-)マウスのアストロサイトフィーダー上に海馬神経細胞を分散培養し、持続性GABAA電流の振幅によりシナプス間隙GABA濃度を計測する。フィーダー上で分散培養した海馬神経細胞からのホールセル記録により、GAT-1やGAT-3を薬理的に抑制したときの持続性GABAA電流や興奮性・抑制性シナプス伝達機能の変化、神経ネットワーク活動を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
発注していた機器の納品が遅れ、次年次になったため。
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