研究実績の概要 |
小児期に比較的多い腎疾患である「微小変化型ネフローゼ症候群(MCNS)」の病因は未だに不明である。 近年、慢性腎臓病(CKD)の進展メカニズムの一つとして腸内細菌叢の乱れ(gut dysbiosis)が注目されている(腸腎連関)。そして、特発性ネフローゼ症候群(INS)においても、腸腎連関の病態への関与が示唆されている(Tsuji, S, et al. Am J Nephrol, 2018;He H, et al. Biomed Res Int, 2021, etc)。 腸腎連関のメディエータの一つとして、腸内細菌の産生する尿毒素(インドキシル硫酸など)が知られている。報告者らは、令和4年度中にラットにピューロマイシン(puromycin aminonucleoside: PAN)を投与して作成した実験的ネフローゼ症候群(PAN腎症)において抗菌薬が尿毒素産生菌を減少させて抗タンパク尿効果を発揮する可能性を確認できた。 球形炭素微粒体からなる経口吸着薬AST120(クレメジンTM)はCKDの進行抑制を目的として広く臨床で用いられているが、MCNSにおける抗タンパク尿効果についての報告はない。 そこで、抗菌薬の代わりにPAN腎症ラットに経口吸着薬AST-120を使用することで抗タンパク尿効果が認められるか否かを明らかにすることを目的として研究を続けた。その結果、AST120を事前にラットに投与後にPANを投与した場合はAST120の代わりにPBSを投与したラットと比較して統計学的に有意にタンパク尿が減少している。
|