研究課題
結節性硬化症(tuberous sclerosis complex, TSC)の中枢神経症状として、てんかんや知的障害、自閉症がよく知られている。てんかんについては、mTOR阻害薬のラパマイシンアナログの有効性が確認されているが、知的障害や自閉症に対しては無効と言う報告もある。我々は、mTORを制御するRhebの異常活性化がTSC2(+/-)マウスのシナプス異常や記憶障害を起こすこと、それらがRheb阻害薬投与によって改善することを明らかにしてきた。本研究では、TSCの自閉症モデルマウスを作製し、それを用いて自閉症の発症メカニズムを明らかにし、Rheb阻害薬の自閉症モデルに対する有効性を検証する。さらに、このモデルを用いて、病勢判定や薬効評価に資するバイオマーカーの探索を行うことを目的とする。初年度は、TSCの自閉症モデルを確立するため、脳内の細胞特異的Tsc1欠損マウスを作出した。ニューロン特異的、アストロサイト特異的、ミクログリア特異的、オリゴデンドロサイト特異的Tsc1欠損マウスを作製したところ、ニューロン特異的Tsc1欠損マウスが生後すぐに死亡したため、残り3系統のマウスを用いて、社会行動を調べた。3チャンバー試験を用いたが、通常は新規マウスへの接近時間が既知マウスのそれより長くなるため、接近時間に有意差がないマウスを社会行動異常があると考えた。解析の結果、ミクログリアとオリゴデンドロサイト特異的Tsc1欠損マウスでは、新規マウスへの接近時間の方が有意に長かった。これに対し、アストロサイト特異的Tsc1欠損マウスでは、接近時間に有意差が認められなかったことから、このマウスを自閉症モデルマウスと考え、今後の実験に用いることとした。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、TSCの自閉症モデルマウスを作製し、社会行動の異常があることを確認できたため。
今後は、今年度確立したTSC自閉症モデルマウスにRheb阻害薬を投与し、社会行動が回復するかどうかを3チャンバー法を用いて検討する。投与量は記憶障害に有効な量を使用する予定である。
自閉症モデルマウスを順次作製したが、ニューロン特異的マウスが生後すぐに死亡したため、以降の実験が出来なくなり、次年度使用額が生じた。未使用額は次年度の消耗品として使用する予定である。
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