研究課題/領域番号 |
22K07949
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
山形 要人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (20263262)
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研究分担者 |
田中 秀和 立命館大学, 生命科学部, 教授 (70273638)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | 結節性硬化症 / 自閉症 |
研究実績の概要 |
結節性硬化症(TSC)の中枢神経症状として、てんかんや知的障害、自閉症が知られている。てんかんについては、mTOR阻害薬ラパマイシンの有効性が確認されているが、知的障害や自閉症に対しては無効という報告もある。私たちは、Tsc2(+/-)マウスのシナプス異常や記憶障害がRheb阻害薬投与によって改善することを報告してきた。本研究では、TSCの自閉症モデルマウスを作製し、その社会行動異常に対して、Rheb阻害薬の有効性を検討するとともに、病勢判定に資するバイオマーカーの探索を行う。 2022年度は、社会行動試験(3チャンバーテスト)において、コントロールマウス(GFAP-Cre)が既知マウスへ接近する時間より、新規マウスへ接近する時間の方が有意に長いことを示した。それに対し、アストロサイト特異的Tsc1欠損マウス(GFAP-Tsc1)では、既知マウスと新規マウスへの接近時間に有意差がないことから、社会行動に障害があると考えられた。2023年度は、このアストロサイト特異的Tsc1欠損マウスへ溶媒あるいはRheb阻害薬を投与し、社会行動異常に改善が見られるか否かを検討した。投与量は記憶障害に有効な量(40 mg/kg、経口投与)と同量にし、まず1回投与の有効性を評価した。その結果、溶媒を投与したGFAP-Tsc1マウスでは、既知マウスと新規マウスへの接近時間に有意差は無かったが、Rheb阻害薬を1回投与したGFAP-Tsc1マウスは、既知マウスより新規マウスへ有意に長く近づくことが明らかとなった。さらに、Rheb阻害薬を3日間連続投与したGFAP-Tsc1マウスでも、同様の結果が得られた。以上の実験より、Rheb阻害薬投与によりTSCの社会行動異常が改善する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、TSC自閉症モデルマウスの社会行動異常に対して、Rheb阻害薬が有効であることを確認できたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、このモデルマウスを用いて自閉症の発症メカニズムを研究する。2024年度は、自閉症モデルマウスの脳内でどのような細胞変化が生じているかを解析する。具体的には、アストロサイト特異的Tsc1欠損マウスの脳切片を、GFAPやTSC関連分子に対する抗体を用いて免疫染色し、その強度をコントロール群と比較する。次に、Rheb阻害薬の投与により、染色強度がコントロール群へ近づくか否かを溶媒群と比較検討する。これにより、Tsc1欠損細胞において生じている細胞変化を同定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
行動実験が安定化し、実験に使用するマウスの頭数や実験回数を減らすことが出来たため、未使用額が生じた。未使用額は次年度の免疫染色用の消耗品として使用する予定である。
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