研究課題/領域番号 |
22K07961
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
林 義人 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (80647123)
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研究分担者 |
新崎 信一郎 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (60546860)
辻井 芳樹 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (80795170)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 癌微小環境 |
研究実績の概要 |
これまでの検討では、大腸癌細胞が線維芽細胞を活性化する機構として、線維芽細胞におけるMeflin発現抑制を介していることを明らかにしてきた。線維芽細胞においてMeflinの発現が抑制されると、癌関連線維芽細胞に特徴的な形質を有することを見出してきた。 R5年度は、線維芽細胞におけるMeflin強制発現の影響について検討を重ねてきた。 レンチウイルスを用いてMeflin強制発現線維芽細胞株を作成すると、共培養した野生型大腸癌細胞の増殖能には影響を及ぼさなかったが、p53機能欠損大腸癌細胞の増殖能は有意に低下することがわかった。免疫不全マウスを用いたゼノグラフトモデルの検討では、Meflin野生型線維芽細胞とp53機能欠損大腸癌細胞を共接種すると、有意にp53機能欠損大腸癌細胞単独腫瘍やMeflin野生型線維芽細胞とp53野生型大腸癌細胞の共接種腫瘍と比べて、Meflin野生型線維芽細胞とp53機能欠損腸癌細胞の共接種腫瘍は有意に腫瘍増大をきたした。しかし、Meflin強制発現線維芽細胞とp53機能欠損大腸癌細胞との共接種では、腫瘍増大は有意に抑制され、Meflin野生型線維芽細胞とp53野生型大腸癌細胞の共接種腫瘍と同程度であった。 また、ヒト大腸癌切除検体を用いた検討では、大腸癌細胞のp53変異発現と線維芽細胞のMeflin発現が逆相関していることがわかった。 さらに、線維芽細胞の活性化機構において重要な役割を果たしていると考えられるAPJの定常的な発現抑制細胞株の樹立を図った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初令和5年度に計画をしていた線維芽細胞におけるMeflinの強制発現株の作成を行い、さらに免疫不全マウスを用いて、腫瘍増大に線維芽細胞におけるMeflin発現が影響していることを明らかにできた。また、線維芽細胞におけるMeflinの発現制御機構についても、検討を行った。さらにAPJ発現抑制細胞株を作成し、腫瘍の微小環境においてAPJが重要な役割を果たしていることを示すことができている。癌関連線維芽細胞におけるMeflinやAPJが大腸癌の新規治療標的になる可能性が示唆されている。
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今後の研究の推進方策 |
APJ発現抑制線維芽細胞株およびAPJ強制発現線維芽細胞株からのエクソソームを抽出し、癌細胞に与える影響についてより詳細に解析を進めていく。そして、癌関連線維芽細胞におけるAPJとMeflinの役割の相関関係について細胞株や免疫不全マウスゼノグラフトモデルを用いて検討を進める予定である。また、癌細胞のシグナル伝達経路を検討し、線維芽細胞がどのようにして癌細胞の増殖に寄与しているのか、その制御機構を明らかにしていく。さらに研究成果をまとめて発信していく予定である。
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