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2023 年度 実施状況報告書

大腸低分化腺がんにおけるSAA1の分子機能解明と診断・治療への応用

研究課題

研究課題/領域番号 22K07964
研究機関札幌医科大学

研究代表者

青木 敬則  札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (40749496)

研究分担者 高澤 啓  札幌医科大学, 医学部, 准教授 (00593021)
山本 英一郎  札幌医科大学, 医学部, 訪問研究員 (60567915)
新沼 猛  札幌医科大学, 医学部, 講師 (60708113)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード早期大腸がん / SAA1 / 腫瘍微小環境 / マクロファージ / 腫瘍関連好中球
研究実績の概要

早期大腸がん臨床例を対象にSAA1発現パターンを免疫組織染色で解析した。その結果、SAA1は低分化成分を含む浸潤先進部において有意に高発現していた。またSAA1発現陽性の浸潤先進部では、マクロファージマーカーであるCD80陽性細胞およびCD163陽性細胞の集積が認められた。さらに、SAA1陽性の浸潤先進部ではMMP9陽性細胞の集積や、好中球の集積も認められた。
大腸がんにおけるSAA1の機能を解析するため、大腸がん細胞株を用いてSAA1のノックダウン実験を行った。SAA1ノックダウンは大腸がん細胞の増殖に影響を与えなかったが、大腸がん細胞の遊走能および浸潤能を低下させた。逆にSAA1の過剰発現は大腸がん細胞の遊走能・浸潤能を促進することが、Boydenチャンバーアッセイおよびコラーゲンゲル浸潤アッセイから確認された。
大腸がんとマクロファージの共培養系による解析を行った。急性単球性白血病細胞株であるTHP-1を分化誘導することでマクロファージ様細胞を得た。これを各種の大腸がん細胞株と間接共培養した結果、マクロファージのIL1B発現が誘導されるとともに、大腸がん細胞のSAA1発現が誘導された。大腸がん細胞のSAA1発現誘導は、抗IL-1β抗体により阻害されたことから、マクロファージ由来のIL-1βが大腸がん細胞のSAA1発現を誘導することが示された。
次に大腸がんと好中球の共培養系による解析を行った。前骨髄性白血病細胞株HL-60を分化誘導することで好中球様細胞を得た。大腸がん細胞株との間接共培養実験から好中球が大腸がん細胞の遊走・浸潤を促進することが明らかとなった。さらに大腸がん細胞、好中球、マクロファージの共培養実験から、マクロファージ由来のIL-1βががん細胞のSAA1発現を誘導し、SAA1が好中球浸潤およびMMP9発現を誘導することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

臨床検体におけるSAA1の発現解析を行い、SAA1が早期大腸がんの浸潤先進部において、低分化成分、マクロファージ集簇、好中球集簇、MMP9発現と相関することを明らかにすることができた。大腸がん細胞におけるSAA1の機能解析を行い、SAA1が遊走・浸潤を促進することを明らかにした。マクロファージと大腸がん細胞の相互作用がSAA1発現を誘導し、大腸がん浸潤を促進することを示す結果を得ることができた。さらに大腸がん細胞由来のSAA1が腫瘍関連好中球の集簇を促進することを明らかにした。

今後の研究の推進方策

大腸がん細胞・マクロファージ・好中球の共培養実験系を用いて、マクロファージがSAA1発現を誘導するメカニズムや、SAA1が好中球浸潤を促進するメカニズムをさらに明らかにする。またマイクロアレイデータから、大腸がん細胞におけるSAA1の分子機能をさらに明らかにする。また、臨床検体の収集・解析を継続し、浸潤先進部におけるSAA1および関連遺伝子発現を詳細に検討する。

次年度使用額が生じた理由

実験の大半を自分で行う事ができたため、人件費の支出が予定より少なかった。次年度は、実験の消耗品、学会出張、実験補助員の謝金として使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Downregulation of SMOC1 is associated with progression of colorectal traditional serrated adenomas2024

    • 著者名/発表者名
      Aoki Hironori、Takasawa Akira、Yamamoto Eiichiro、Niinuma Takeshi、Yamano Hiro-o、Harada Taku、Kubo Toshiyuki、Yorozu Akira、Kitajima Hiroshi、Ishiguro Kazuya、Kai Masahiro、Katanuma Akio、Shinohara Toshiya、Nakase Hiroshi、Sugai Tamotsu、Osanai Makoto、Suzuki Hiromu
    • 雑誌名

      BMC Gastroenterology

      巻: 24 ページ: 91

    • DOI

      10.1186/s12876-024-03175-1

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Serum amyloid A1 recruits neutrophils to the invasive front of T1 colorectal cancers2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshido Ayano、Sudo Gota、Takasawa Akira、Aoki Hironori、Kitajima Hiroshi、Yamamoto Eiichiro、Niinuma Takeshi、Harada Taku、Kubo Toshiyuki、Sasaki Hajime、Ishiguro Kazuya、Yorozu Akira、Kai Masahiro、Katanuma Akio、Yamano Hiro‐o、Osanai Makoto、Nakase Hiroshi、Suzuki Hiromu
    • 雑誌名

      Journal of Gastroenterology and Hepatology

      巻: 38 ページ: 301~310

    • DOI

      10.1111/jgh.16055

    • 査読あり
  • [学会発表] 大腸鋸歯状腺腫の発育進展とSMOC1発現との関連性の検討.2024

    • 著者名/発表者名
      青木敬則,高澤啓,山野泰穂,菅井有,鈴木拓.
    • 学会等名
      第20回日本消化管学会総会学術集会
  • [学会発表] Reduced expression of SMOC1 is associated with progression of colorectal traditional serrated adenomas and conventional adenomas.2023

    • 著者名/発表者名
      Aoki H, Takasawa A, Yamamoto E, Yamano HO, Harada T, Shinohara T, Sugai T, Suzuki H.
    • 学会等名
      UEG Week 2023
    • 国際学会
  • [学会発表] SMOC1のダウンレギュレーションは大腸鋸歯状病変の進展と関連する.2023

    • 著者名/発表者名
      青木敬則,高澤啓,山本英一郎,新沼猛,山野泰穂,原田拓,久保俊之,北嶋洋志,甲斐正広,仲瀬裕志,菅井有,小山内誠,鈴木拓.
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 早期大腸がん浸潤先進部の分子解析.2023

    • 著者名/発表者名
      須藤豪太,山本英一郎,青木敬則,高澤啓,吉戸文乃,新沼猛,久保俊之,原田拓,萬顕,北嶋洋志,甲斐正広,小山内誠,仲瀬裕志,鈴木拓.
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] 大腸鋸歯状病変のDNAメチル化は正常大腸粘膜の抑制的なヒストン修飾と相関する.2023

    • 著者名/発表者名
      鈴木拓,山本英一郎,須藤豪太,青木敬則,久保俊之,佐々木基,新沼猛,北嶋洋志,甲斐正広,山野泰穂,仲瀬裕志,菅井有.
    • 学会等名
      第82回日本癌学会学術総会

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公開日: 2024-12-25  

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