研究課題
好酸球性胃腸炎10名、潰瘍性大腸炎8名、食物アレルギー無症状期20名の血清を収集することができた。また、好酸球性胃腸炎については、食事療法前後、負荷試験後の血清も収集した。これらの血清を用いて、サイトカイン、ケモカイン64種類についてミリプレックスで解析を行った。疾患対照として潰瘍性大腸炎を、非炎症対照として食物アレルギー非発作時の血清を用いた。好酸球性胃腸炎の炎症期に30種類の分子が対照群と比して有意に上昇していた。上昇していた30種類のうち、Cytokine Xは食事療法が成功した場合、ゼロレベルに低下し、かつ原因食物負荷によって、臨床パラメータよりも早期から上昇することを突き止めた。胃粘膜トランスクリプトームの研究においては、好酸球性胃腸炎で特異的に上昇、低下した遺伝子が明らかとなった。これは測定を行った14名全員に共通していた。論文投稿中のため、分子名は秘匿させていただく。上皮細胞の増殖に関する分子群、粘液分泌を行う分子群の明らかな上昇が見られ、胃酸分泌分子群の低下が目立った。これらの変化は多くがCytokine Yの下流に位置している。これがKey cytokineであると推定された。Cytokine Xが炎症期に高値、食事療法により消失、負荷試験により再上昇という結果を得た。Cytokine XとCytokine Y(トランスクリプトーム研究においてキーサイトカインと判明した)は、同一の免疫細胞から産生されることが知られている。この細胞は、原因食物を感知している可能性があり、好酸球性胃腸炎の炎症を形作るとの予想が成り立つ。
2: おおむね順調に進展している
64種類のサイトカイン、ケモカインのうち、EGIDで疾患特異的に上昇する血清サイトカインを特定することができた。上昇が認められた分子は30種類であった。疾患対照である潰瘍性大腸炎特異的上昇分子は3種類のみであった。潰瘍性大腸炎についても炎症期の血清を使用して検査が行われたため、EGIDでは、多くのサイトカイン/ケモカインが上昇していることがわかる。EGIDの食事療法によって改善時に低下する血清サイトカインを特定することができた。30種類のEGID特異的上昇分子の中で、唯一、Cytokine Xのみが、ゼロレベルまで低下していた。
Cytokine Xをバイオマーカーとして確立するために、患者数と条件を増加させて、ROCカーブ作成などを行う。また、食物負荷試験で経時的に症状が惹起されるまでの血清において測定を行い、EGID特異的な上昇分子のいずれの分子が、最初に上昇するかを突き止める。持続型EGIDの典型例5名の食道、胃、十二指腸、回腸、横行結腸、S状結腸の消化管粘膜からRNAを抽出し、これらのサイトカインの産生消化管部位を特定する。
サイトカイン/ケモカインアレイについて、2023年度に収集する予定の負荷試験後のサンプルを測定するために、資金を充てさせていただくこととした。
すべて 2023 2022 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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