研究課題
本研究はこれまで申請者らが見出してきた「細胞傷害性リンパ球による病原性CD4エフェクターT細胞の分化調節機構」という独自の概念や知見を基盤として、こうしたリンパ球分画による細胞傷害活性を応用したIBDに対する新規治療法開発の可能性を追求する研究を展開している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)野生型C57BL/6マウス (WT)の脾臓をはじめとした二次リンパ組織あるいは腸管組織からILC-1、NKp46細胞、NKp44細胞、NKT細胞、gdT細胞、CD8T細胞などを単離し、分化・活性化マーカーや各受容体の発現によって各サブセットのプロファイルを構築することに成功した。2)つぎにこれらのサブセットをそれぞれ単離し、各々のサイトカイン産生能、細胞溶解能、細胞死誘導能を測定したところ、これら各細胞群間において相反する機能を保有している事実を確認することができた。3)さらに今後、サイトカイン産生、細胞溶解能、細胞死誘導能など詳細な細胞傷害活性の解析系樹立に不可欠なクローン化を目的として、単離した各サブセットをそれぞれ特異的な刺激方法を用いて培養し、このうち複数の系統の培養条件を見出すことに成功した。これらの研究成果は、上記のリンパ球サブセットに関して生理的な条件下における免疫学的解析が可能であること、またこれらの細胞がT細胞にそれぞれ異なる影響を与える可能性があることを示唆する。さらに現在、これらの細胞を用いた生化学的解析や機能的解析にむけて、その条件検討を進めている。さらに、これらのリンパ球サブセットとT細胞との混合培養の条件検討やその後のFACS、サイトカイン測定、また免疫染色や生体イメージングなどの予備実験を現在行っている。
2: おおむね順調に進展している
IBDの病態には過剰に賦活化したCD4 effecter T細胞によって誘導される免疫異常が根幹にあり、腸管粘膜の免疫恒常性維持がeffecter T細胞に対する細胞傷害性リンパ球サブセットの機能によって制御されている可能性に着目しているが、今回我々はマウスから複数の細胞傷害性を持ったリンパ球分画をそれぞれ分取した上で新たな機能を見出し、さらにこれらの細胞の刺激・培養条件を樹立できたことは大きな成果であるといえる。
次年度は同定した各リンパ球サブセットによる異なる細胞傷害活性などの機能に着目し、これを詳細に解析するために、in vitroおよびex vivo実験系では51[Cr]を用いた細胞溶解試験、分子生物学的解析、そして網羅的解析による細胞傷害活性関連遺伝子群の抽出の準備、またin vivo実験系では遺伝子改変動物における疾患モデルの誘導とその臨床および病理学的解析、FACS解析、サイトカイン測定、また免疫組織染色や生体イメージングなどを行う予定である。
理由:試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。使用計画:検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
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