研究課題
本研究はこれまで申請者らが見出してきた「細胞傷害性リンパ球による病原性CD4+エフェクターT細胞の分化調節機構」という独自の概念や知見を基盤として、こうしたリンパ球分画による細胞傷害活性を応用したIBDに対する新規治療法開発の可能性を追求する研究を展開している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)野生型C57BL/6マウス (WT)の脾臓をはじめとした二次リンパ組織あるいは腸管組織から単離した各細胞傷害性リンパ球サブセットを様々な刺激法で培養し、複数系統の株化に成功した。その上で、これらの樹立した株のプロファイルをあらためて構築しつつ、細胞傷害活性(サイトカイン産生能、細胞溶解能、細胞死誘導能)が解析可能であることを確認した。2)ところが、こうした株は継代による長期培養は困難であることが判明した。3)上記の株のうち、T細胞との混合培養の結果からT細胞に対する特異的反応を示すクローンに着目して、細胞傷害活性関連遺伝子群の解析を試みた結果、このサブセットが発現している可能性のある分化・活性化マーカーあるいは受容体を複数同定することができた。これらの研究成果は生理的条件下における上記リンパ球サブセットの免疫学的解析が可能であること、とくにT細胞に影響を与える細胞傷害性リンパ球サブセットの免疫学的解析を通じ、IBDの治療標的となり得る候補遺伝子の抽出が可能であることを示唆している。さらに現在、これらの細胞を用いた生化学的解析や機能的解析を進めている。また実験IBDモデルを用いて、これらの細胞による新規細胞治療の技術開発に向けて、その条件検討を現在準備中である。
2: おおむね順調に進展している
IBDの病態には過剰に賦活化したCD4 effecter T細胞によって誘導される免疫異常が根幹にあり、腸管粘膜の免疫恒常性維持がeffecter T細胞に対する細胞傷害性リンパ球サブセットの機能によって制御されている可能性に着目しているが、今回我々はマウスから複数の細胞傷害性を持ったリンパ球分画をそれぞれ分取した上で新たな機能を見出し、さらにこれらの細胞の刺激・培養条件を樹立しつつ、新規治療標的の可能性を秘めた遺伝子を複数抽出できたことは大きな成果であるといえる。
次年度は同定した各リンパ球サブセットによる異なる細胞傷害活性などの機能に引き続き着目し、これをさらに詳細に解析するために、in vitroおよびex vivo実験系では51[Cr]を用いた細胞溶解試験、分子生物学的解析、そして網羅的解析による細胞傷害活性関連遺伝子群のさらなる抽出の準備、またin vivo実験系では遺伝子改変動物におけるIBDモデルの誘導とその臨床および病理学的解析、FACS解析、サイトカイン測定、また免疫組織染色や生体イメージングなどを行う予定である。
理由: 試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。使用計画: 検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
すべて 2024 2023
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 2件、 査読あり 9件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 5件)
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