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2023 年度 実施状況報告書

膵癌進展の病態伝播を担う細胞外小胞の機能解明~臨床応用を目指して~

研究課題

研究課題/領域番号 22K07982
研究機関三重大学

研究代表者

坪井 順哉  三重大学, 医学部附属病院, 助教 (70829324)

研究分担者 江口 暁子  三重大学, 医学系研究科, 特任准教授(研究担当) (00598980)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワード細胞外小胞 / 膵癌
研究実績の概要

膵がんのEUS-FNA検体、36検体から細胞外小胞(EV)を回収し、intact EV数およびサイズの測定を行った。また、コントロールとして自己免疫性膵炎(AIP)6例の残余検体からEVを回収した。膵癌ステージⅠ~Ⅳ、AIPの比較を行ったところ、EV数の平均はステージⅠ、Ⅱに比べⅢは高くなるが、ステージⅣでは減少を認めた。EVの平均サイズについてはステージⅢまでは上昇し、ステージⅣで低下を認めた。この結果が血中でも反映されるかを調べるために、膵癌患者30人(ステージI:3人、II:12人、III:2人、IV:13人)の血清を回収し、血中EV数を測定した。その結果、血中EV数は、各ステージ間では大きな変動はなかったが、平均値としてステージIIB以降で高くなる傾向があった。EUS-FNA検体でも認めたように、ステージIVで血中EV数が低下する患者も認めた。TNM分類の各因子で解析したところ、リンパ節転移がある患者で血中EV数が有意に高くなることがわかった。
膵癌におけるEVの機能解析をおこなうため、ヒト膵がん細胞株Panc-1やMIA-Paca-2からEVを得ることとした。膵癌増殖に関与するという報告があるサイトカインを添加したところ、膵癌細胞がこれらの刺激に反応してEVを放出することを明らかにした。ただし、細胞種によって、EVを放出するサイトカインの種や濃度は異なっており、サイトカインの濃度が高い方が良いというわけではなく、EVを放出できる細胞の状態を保つ至適濃度があることがわかった。最終的に、MIA-Paca-2ではIL-1βやTNF-αを含む4種のサイトカインによりEV放出量が2-2.5倍高くなることが、Panc-1ではIL-1βを含む4種のサイトカインによりEV放出量が2倍高くなることがわかり、それぞれの膵癌細胞がEVを放出するサイトカインの至適濃度を決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の研究計画に沿って、ある程度予定通り遂行できている。
膵癌患者の血中EV数を測定し、解析した。
ヒト膵癌細胞株を用い、膵癌の細胞増殖に関わる既知のサイトカインを添加して刺激し、産生されたEV回収を行った。細胞株ごとにEVを放出するサイトカインの濃度は異なっており、各細胞株がEVを放出するサイトカインの至適濃度を決定した。

今後の研究の推進方策

①EVの標的細胞として、間質を形成するヒト線維芽細胞に膵癌細胞株から得られたEVを添加し、細胞の活性化を細胞形態・細胞走化性・遺伝子発現の変化により検討する。標的細胞が有意に活性化される条件を決定し、RNA-sequencingやリン酸化プロテインアレイを用いて標的細胞内の活性化経路を網羅的に解析し、膵癌EVが影響をおよぼす標的細胞の活性化経路を同定する。また、EVに封入されたmiRNAが標的細胞の活性化に関与する可能性を検討するため、EVからRNAを抽出し、miRNA-sequencingにより膵癌進行に関わるmiRNA成分を同定し、miRNAデータベースを用いて標的細胞の活性化経路に関与すると予測されるmiRNA成分を複数選択する。最後に、標的細胞を活性化するEV成分を特定するために、選択したEV成分を標的細胞に導入し、標的細胞の活性化を検討する。標的細胞の活性化がみられた成分に関しては、anti-miRNAを同時に導入することで標的細胞の活性化が抑制できるかを検証する。
②膵癌進行に関わるEV-miRNAを同定した後、膵癌患者および健常者の血中EVを精製し、精製EV中における上記miRNAをTaqman miRNA assayにより測定する。また、血清を用いて同様にmiRNAを測定し、精製EVを使用して得た数値と比較することで、EV成分の測定に血中EVを用いるか血清を用いるかを決定する。これらの成分量と膵癌のステージや予後との関係を解析し、ヒト膵癌診断に応用可能なバイオマーカーとしての意義を検証する。

次年度使用額が生じた理由

膵癌患者の組織検体から細胞外小胞(EV)を抽出し、ヒトのがん関連線維芽細胞(CAF)などに添加して細胞形態や遺伝子発現の変化を見る予定でその予算を計上していたが、組織から得られたEV数が極めて少なく、ヒト膵癌組織の解析に使用する予算が当初の計画よりも少なく済んだため。
今後はヒト膵癌細胞株からEVを抽出し、ヒト線維芽細胞などにEVを添加して反応を確認し、その活性化経路を解析する実験や、膵癌患者の血中のEV解析の実験のため予算を使用する。

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公開日: 2024-12-25  

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