研究課題
炎症性腸疾患(IBD)は若年に発症し慢性に炎症が持続することにより、患者の生活の質を妨げる難治性炎症性腸疾患である。現在多くの生物学的製剤が存在し潰瘍性大腸炎患者の寛解導入・維持療法として使用されており、治療効果予測、客観的な治療効果判定、再燃予測のためのバイオマーカーに関する研究が精力的に行われてきている。またIBD患者の活動期に血小板増加や機能亢進が認められることは報告されているが、 臨床的に有用な血小板表面マーカーの探索に関する研究、特に数多くのマーカーを網羅的に解析している報告はない。本研究は活性化血小板、単球―血小板結合体をターゲットとした、重症度、治療効果 予測、治療効果判定、再燃予測などに有用な疾患バイオマーカーや治療標的となり得る血小板分子を同定し、また活性化血小板をターゲットとした従来の作用機序とは異なる新規治療薬候補を開発することを目的とし、研究を開始した。令和4年度はIBD患者における疾患バイオマーカー・治療標的に関与する血小板分子の同定のため、潰瘍性大腸炎、クローン病患者の血清を回収し、フローサイトメトリーおよびELISAにて活性化血小板の割合やサイトカイン産生能について検討をした。2つの表面マーカーおよび可溶性サイトカインが潰瘍性大腸炎、クローン病患者において、健常人より有意に高いこと、さらに潰瘍性大腸炎重症例において中等症以下に比べ上記のマーカーが高いことも確認され、重症例を選別し得るマーカーである可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
現在順調に進捗している。
今後は現在まで得られたデータをもとに活性化血小板の治療経過の推移や予後予測との関連に関して研究を進める。また今後血小板-白血球複合体の病態・病勢への関与を検討するために、開始後早期の治癒過程や難治 化における血小板複合体の役割について検討をする予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
JGH Open.
巻: 6 ページ: 612-620
10.1002/jgh3.12796.