研究実績の概要 |
食道表在癌への内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)後の食道狭窄はQOLを低下させ、新たな予防治療が求められている。私たちはESDを行えるイヌでの狭窄モデルを作成し、CTを用いた正確な狭窄評価も実現してきた。今回、下肢動脈などで狭窄予防に使われるパクリタキセル薬剤溶出性バルーンに着目し、食道の狭窄に対しても有用ではないかと考えた。食道では内視鏡下に直視下に確実に局所注射をすることができ、より高い狭窄予防効果が期待できると考えた。これらの点を踏まえ、パクリタキセル局所注射による新たな食道狭窄予防治療の開発を目的として研究を開始した。また、イヌ、ヒトでもインフラマソーム,TGF-βが狭窄に関与 し、パクリタキセルがこれらを抑制するのか、その機序についても解明する予定である。 昨年度は、イヌの食道に内視鏡で人工潰瘍を作成し、局注するパクリタキセル至適濃度や至適投与頻度の検討を行い、5mg/kgを術日から術後3日まで連日投与することで、コントロール群にくらべて瘢痕化抑制を確認した。 瘢痕化抑制効果についての至適濃度を決定するために実験を施行していたが、パクリタキセルの購入が難しかったこと、研究者の出向もあり、実験を中断していた。 またパクリタキセル局注によるインフラマソームやTGF-Bへの影響を検討するため、パクリタキセル局注後のイヌ食道組織を内視鏡下生検し検討を行った。パクリタキセル局注によるインフラマソーム関連因子やTGF-B発現への影響をWB、ELISA法や免疫組織学的蛍光染色で検討中である。
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