研究課題/領域番号 |
22K08036
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
宮部 勝之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (00543985)
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研究分担者 |
赤津 裕康 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (00399734)
吉田 道弘 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 講師 (20636328)
井之上 浩一 立命館大学, 薬学部, 教授 (30339519)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胆管癌 / metabolome / スタチン製剤 |
研究実績の概要 |
各種悪性腫瘍の治療効果が改善されるなか、胆管癌の標準化学療法は選択肢が少なく、さらなる効果的な治療薬の発見、分子生物学的な解明が社会的にも必須である。申請者らは多数例の胆管癌症例を用いたcase-control studyにてHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン製剤)の胆管癌発症の予防効果および予後改善効果を報告した。しかしながらスタチン製剤のどの作用機序が癌進行抑制に関与しているのか、十分に解明されていない。我々は胆汁メタボローム解析を通した代謝産物の胆管癌発生・進展機序への関与に着目し、スタチン製剤に影響される胆汁中メタボライトを同定、その腫瘍発生・進展メカニズムへの影響を検討する。さらに、同定されたメタボライトにて発現が制御される代謝・シグナル経路を検索・同定する。最終的にはスタチン製剤を投与できない患者にも使用できる、胆管癌予防もしくは進展予防効果につながる低分子化合物の探索を目的としたい。 現在目標症例数の胆道癌、コントロール群の胆汁収集を終了した。また、これら2群における栄養摂取状況の解析も終了したが、過去の報告とは違い、胆石患者と脂肪分の多い食事の摂取には関連を認めず、魚、うどん、柿摂食や特定のビタミン摂取と胆石の存在に関連を認めた。これらのことより、胆石の発生には、これまでとは違う栄養素が影響している可能性がみられた。現在死体胆汁におけるpreliminaery studyの結果を踏まえ、生体胆汁におけるメタボローム解析を予定数行っている段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遅れていた胆道癌およびコントロール群における胆汁採取が、本年度にて目標症例数収集することができた。また、preliminary studyとして、死後胆汁を用いたメタボローム解析も終了し、胆道癌およびコントロール群の栄養解析も実施終了した。これらの結果を踏まえ、現在生体胆汁でのメタボローム解析を予定数行っているところである。
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今後の研究の推進方策 |
死後胆汁を用いたメタボローム解析では、胆汁の粘度が非常に多様であり、また胆汁酸濃度や脂肪酸濃度にばらつきがみられた。測定は何とか行うことができたが、以前のpreliminary studyで行った胆汁酸解析・脂肪酸解析とかなりの乖離がみられ、生体胆汁とは違う環境下で測定されたことが考えられた。本結果は参考にはできるが、生体胆汁の結果とは違う結果が出ることも予想された。 ただ、この解析で得られた胆汁測定の経験をもとに、生体胆汁の胆道癌と総胆管結石のメタボローム解析を行うこととした。粘度に違いのある胆汁ではあるが、ある指標をもとに濃度を標準化しメタボローム解析を行い、現在30例の解析を終了した。残りの症例解析を本年度中に行う予定である。 また、胆汁採取症例における摂取栄養素の比較も行っていく。現在胆石群と非胆石群の比較は終了したが、胆道癌における摂取栄養素の解析はまだ行われていないため本年度中に終了させる。 昨秋、立命館大学にて胆汁メタボローム解析の臨床応用に関する知見に関する講義を行ったが、この機会にてLC-MS/MS法についてのテクニカルな議論も行った。メタボローム解析前のpreconditioningをしっかりと行い、正確な結果を出すことに集中する。 また、収集症例での臨床データ情報が摂取栄養素以外にも存在するため、スタチン製剤摂取の有無やそれ以外の因子との関連も調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
共同研究にて、引き続きメタボローム解析を行うことになったため。
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