研究課題
分子シャペロンは細胞内蛋白の恒常性維持を担い細胞保護的作用を持つ反面、変性細胞の生存や癌細胞の抗アポトーシス作用から病態進展に寄与することが報告されている。我々の検討では、HSP110ファミリーに属するApg-2のノックアウトマウスにおいて、肝発がんと肝脂肪化抑制が確認された。Apg-2はユビキチン・プロテアソームシステムと共役し、Liver Kinase B1(Lkb1)の分解を促進させ、AMP-activated protein kinase(Ampk)シグナルを抑制し、脂肪肝、肝がんを促進する。この結果は、長期的かつ一連の、脂肪肝から肝発がん過程において、Apg-2が治療候補分子となり得ることを示している。しかし、この詳細な作用機序の解明に必要なin vitroの系として、単離したマウス肝細胞や肝がん細胞株では、代謝能低下や嫌気性解糖系に依存する癌細胞特有の代謝環境から不十分であった。この問題点を克服するために、本研究では、より生体に近い代謝環境を持つ肝オルガノイドと分化後の肝細胞を用いたApg-2分子の機能解析を発案した。即ち、Apg-2のwild type, ノックアウトマウス、Apg-2のシャペロン活性を担うATP結合部位,K68をアラニン(A)に変異させたノックインマウスの3系統より肝オルガノイドを作成し、機能解析を行う(下図実験①)。さらに、肝オルガノイド移植実験を行う(下図実験②)。このApg-2のin vitroでの解析系は今後の創薬開発の前段階となる化合物や抗体スクリーン系として重要な過程である。
2: おおむね順調に進展している
Apg-2のwild type, ノックアウトマウス、Apg-2のシャペロン活性を担うATP結合部位,K68をアラニン(A)に変異させたノックインマウスの3系統より肝オルガノイドを作成した。またApg-2に対するVHH抗体を作成し抗体としてのアプリケーションを検証中である。
Apg-2 Wild typeの肝オルガノイドを培養過程でレンチウイルスを用いてEGFPでマーキングする予定であったが、EGFP-CAGマウスからのオルガノイド樹立する方針とした。現在は先行研究として、このEGFP陽性のオルガノイドを肝障害マウスに移植しin vivoでの生着、分布を検証する予定としている。
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Lab Invest.
巻: 102(3) ページ: 281-289
10.1038/s41374-021-00680-9.