研究実績の概要 |
研究代表者が肝線維化増悪、改善との関与を明らかにしてきたmiRNA , 肝線維化進行の原因となるSenescence-associated secretory phenotyp (SASP)化した老化細胞の維持に必須遺伝子に対するsiRNAを用いた排除, 線維化進展に伴っておこる不正angiogenesis の正常化による肝線維化改善効果を、肝特異的にmiRNA,siRNAを輸送可能である肝標的型MEND、抗体製剤を用いてpre-clinical 動物モデルで検証し、現在unmet medical needs である肝線維化に対する薬剤開発の基盤形成を目指し検討を行うものである。更に、また、NORTE study Groupの臨床研究より収集、蓄積した臨床情報と詳細に紐づけされた肝生検、血清検体を用いて肝線維化と関連する新規因子の同定を目指し、肝線維化に対する薬剤開発の基盤整備を目指す研究となる。今年度は、肝星細胞指向性のMENDを使用して、miR-Aを四塩化炭素肝線維化モデルマウスに投与し検討を行った。通常の肝細胞指向性のMENDに比して、強い肝線維化抑制効果を確認するとともに、培養ヒト肝星細胞を用いたin vitro の検討においても強い抗線維化作用を発揮しうることを明らかにした。更に、肝脂肪化線維化モデルマウス(STAMマウス)による検証実験を開始した。また、臨床検体の収集も進め肝生検にて診断されたMASLD肝線維化症例の肝組織、血清の収集を行い、今後血清中エクソソーム内miRNAを用いたmiRNA array, 血清サンプルのサイトカインアレイ, 肝生検検体を用いたRNA-sequencing、miRNA array を用いて網羅的な解析を行う基盤を整えた。
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今後の研究の推進方策 |
NASH・HBV線維化進展・非進展例の臨床検体を用いた肝線維化促進・改善と関連する因子の同定:申請者らが中心となり、肝疾患の臨床研究・臨床検体収集を行う北海道大学関連病院からなる肝疾患臨床研究グループNORTE Study Groupにおいて、詳細な臨床情報と紐づいた臨床検体を用いて、etiology 特異的な肝線維化進展、改善と関連するmiRNA, サイトカイン、遺伝子を血清中エクソソーム内miRNAを用いたmiRNA array, 血清サンプルのサイトカインアレイ, 肝生検検体を用いたRNA-sequencing、miRNA array を用いて網羅的な解析を行い新規に同定する。同定し得た、肝線維化改善と関連するmiRNA,サイトカインによる線維化改善効果を上記のin vitro, in vivo モデルにより検討する。 肝線維化モデルマウスにおいて、siRNA-MEND を用いたSASP化老化細胞除去と肝線維化改善効果の検討:これまでの報告にて、肝老化細胞特異的に発現し、老化細胞の細胞死を抑制する因子(BRD4, HSP90,FOXO4およびGLS-1)を制御する事によりSASPした細胞を細胞死に誘導し、肝線維化が改善しうる可能性が報告されている。我々はこれらBRD4が肝線維化モデル化マウスに発現が上昇している事を確認した。BRD4, HSP90,FOXO4およびGLS-1は、SASP化した老化細胞以外での発現は低値でこれら遺伝子抑制は正常細胞への影響は小さい事が想定される。そこで、既にmiR-A MENDにて確立している肝特異的なRNA輸送システムを用いBRD4, HSP90,FOXO4およびGLS-1に対するsiRNAをsiRNA-MENDを用いて肝線維化モデルマウス(四塩化炭素モデル、NASHモデル)の肝に輸送しSASP細胞除去による肝線維化改善を検討する
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