研究課題
大腸癌では、BRAF阻害薬併用療法が保険収載されたにも関わらずBRAFV600E変異随伴スプライシング異常についての検討の報告はほぼ皆無でありこの解明は急務である。今年度は昨年度に引き続き、MSIスプライシング変異として代表的なBRAFV600E変異の特徴を持つ大腸癌に関しての臨床病理学的解析を行った。2016年8月から2022年3月までに当院で外科的切除を受けた大腸癌患者651人の腫瘍部のホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織を用いてDNAミスマッチ修復(MMR)蛋白の免疫組織化学(IHC)によりMMR statusを評価し、MMR発現欠損(dMMR)大腸癌に対してBRAFV600変異解析をSanger法で行った。その結果、58例(8.9%)がdMMR大腸癌であり、52名がdMLH1大腸癌であった。MMR発現正常(pMMR)大腸癌と比較して、dMMR大腸癌およびdMLH1大腸癌では右側結腸に多く、高齢発症であり、腫瘍径が大きかった。dMMR大腸癌の中で、髄様癌と低分化腺癌はdMLH1を有していたが、興味深いことに粘液癌の全てがdMLH1を持つわけではない一方、全ての髄様癌でdMLH1の特徴を有していた。さらにすべての髄膜癌では、dMLH1に加えてBRAFV600E変異陽性であった。また、BRAFV600E変異陽性かつdMMR大腸癌ではBRAFV600E変異陽性かつpMMR大腸癌よりも予後が良かった。今年度は、BRAFV600E変異陽性大腸がんでは、dMMRを伴うと予後が良く、髄様癌ではBRAFV600E変異陽性かつdMLH1の特徴を有することが判明した。
3: やや遅れている
MMR正常型BRAFV600E陽性がん患者の集積が遅れている。しかしながら徐々に症例数が増えている。
MMR正常型BRAFV600E陽性がん患者に関しての臨床病理学的検討を主に進め、同時にMSI変異図プライシングバリアント検出開発も進めていく。
試薬の使用が少なくて済んだためである。ただし次年度の試薬の使用料が増えることが見込まれるため、翌年度文として請求した。
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