研究課題/領域番号 |
22K08055
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研究機関 | 関西医科大学 |
研究代表者 |
本澤 有介 関西医科大学, 医学部, 講師 (90737884)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 炎症性腸疾患 / クローン病 / 腸管線維化 / Heat shock protein 47 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
クローン病(CD)腸管狭窄においてはコラーゲン産生の過剰産生に由来する腸管線維化が原因と考え、コラーゲン産生に必須の分子シャペロンであるhear shock protein(HSP)47に着目して解析を行った。我々は今まで炎症性サイトカインであるIL-17AがHSP47を介してコラーゲンの産生を亢進させることを報告してきた。さらに前年度までの検討(若手研究)では筋線維芽細胞株に対するIl-1β、TNF-α、TGF-β1などの炎症性・抗炎症性サイトカインの刺激およびそれぞれの共刺激にてHSP47、コラーゲンの産生が亢進することを明らかとした。また、患者背景の検討ではMediterranean fever(MEFV)遺伝子を有するCDにて腸管狭窄症例が多く、血清のIL-1β産生が上昇していることを確認した。本研究ではIL-1β亢進にはMEFV遺伝子変異を有する症例ではインフラマソームと呼ばれる蛋白複合体が関与している可能性を考慮し、インフラマソームの活性化を確認する目的でCaspase-Ⅰ活性化について蛋白レベルでの解析および免疫染色による評価を行い、発現上昇を確認した。また、インフラマソームの関与からIL-1β以外にもIL-18といった炎症性サイトカインが上昇していることをCD患者血清にて確認した。さらに、IL-18については筋線維芽細胞株への刺激により、むしろHSP47やコラーゲンの産生が抑えられた。疾患別の解析では炎症性腸疾患としてCD以外にも潰瘍性大腸炎(UC)の手術検体およびcontrol検体で検討し、CDがUCやcontrol検体に比較して有意にIL-10の上昇を認めた。一方、IL-13に関してはUCにて上昇が認められた。IL-10についてはIL-10KOマウスでは腸炎に伴うコラーゲン産生が認められることからもCD腸管狭窄における重要な因子である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CDの腸管狭窄症例では背景因子としてMEFV遺伝子変異を有している可能性が示唆されたことや血清IL-1βが上昇していることからインフラマソームの関与について解析を行った。インフラマソームの活性化についてはCD症例の検体をMEFV遺伝子のE148QSNPを有する症例と有さない症例の血液中の単球にてLPSおよびATPによる刺激を加えることでCaspase-Ⅰの活性化に差があるかを検討し、SNPを有する症例が有意に活性化されていることを蛋白レベルにて確認した。また、手術検体を用いて同SNPの有無についてCleaved Caspase-ⅠおよびIL-1βの免疫染色を行い、同SNPを有する症例にて発現亢進が認められた。インフラマソームの関与の可能性からIL-1β以外にもIL-18の関与の可能性も考えられたことから、同症例の患者血清の解析を行い、IL-18の上昇を確認した。さらに筋線維芽細胞株にIL-18による刺激試験を行った結果、IL-18刺激ではHSP47やコラーゲンの発現が低下することが確認された。疾患別の解析では炎症性腸疾患としてCD以外にも潰瘍性大腸炎(UC)の手術検体およびcontrol検体(大腸癌患者の腸管正常部位)よりmRNAを抽出し、cDNAを作成し、各種サイトカインの発現について検討した。前年度までの検討(若手研究)ではIL-17A、TGF-β1、TNF-αなどを検討していたが、本研究ではIL-13やIL-10についても検討し、CDがUCや正常検体に比較して有意にIL-10の上昇を認めた。一方、IL-13に関してはUCにて上昇が認められた。IL-10についてはIL-10KOマウスでは腸炎に伴うコラーゲン産生が認められることからもCD腸管狭窄における重要な因子である可能性が示唆され、本サイトカインによる刺激試験や各種サイトカインの発現状況についても検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
CD腸管線維化メカニズムの解析を目指し、研究計画にあった各種サイトカイン刺激の検討および腸管狭窄症例の背景因子にMEFV遺伝子変異を有している可能性に着目し、インフラマソームに関連した解析を中心に行った。MEFV遺伝子変異症例において複数のSNPが存在し、特に症例の多かったE148QSNPを有する症例に着目し、インフラマソームの活性化を確認し、手術検体を用いた免疫染色でもIL-1βと共に活性化されていることが確認された。さらに以前より確認されたIL-1βに加えてIL-18の上昇も血清にて確認され、IL-18については研究計画に沿って筋線維芽細胞への刺激検討を行い、他の炎症性サイトカインとは異なり、少数例の検討ではあるもののHSP47およびコラーゲンの発現が抑制されていた。背景因子ではインフラマソームの活性化が腸管線維化に関与する可能性からIL-18の刺激試験の結果については、多くの検体の解析やIL-18の発現部位について解析する必要があり、複数のサイトカインでの共刺激や手術検体を用いたIL-18の免疫染色の解析を予定している。また、IL-10がCDの腸管炎症部位にて発現亢進しており、同サイトカインの筋線維芽細胞への刺激試験も検討している。さらにHSP47発現上昇に関与するサイトカインの経路についてはIL-17AではJNK経路、IL1-βはNALP3インフラマソーム、TGF-β1ではsmad3の経路が関与していることが確認されたが、IL-18経路やIL-10経路についても検討する。また、当研究室ではCD類似IBDモデルマウスであるIL-10ノックアウト(KO)も保有していることから、同マウスの腸管線維芽細胞の単離・培養を行い、野生型マウスの腸管線維芽細胞との線維化に関与するサイトカイン刺激を行い、その差異についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度はヒト血清、細胞株、手術検体を中心に解析を行った。理由としてはヒト検体による解析にて新たにIL-18、IL-10といったサイトカインが解析に重要であると判断され、複数の解析を要したことやIL-1βやインフラマソーム活性化のための免疫染色の条件設定に時間を要したことが挙げられた。また、研究者の異動により、動物実験施設での実験については同系統マウスがあったものの施設利用についての手続きに時間を要していることが挙げられる。この為、本年度はヒト検体中心の検討となり、マウスに予定されていた必要が減額され、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度の研究遂行に必要とされる経費は1)ヒト細胞株での解析のための各種抗体および試薬、2)実験マウスの飼育・管理、3)情報収集および成果発表のための旅費である。1) 各種抗体および試薬:サイトカインの刺激実験、インフラマソームの解析や遺伝子解析に必要な試薬・抗体の購入が必要である。2) 実験マウスの飼育・管理:腸炎状態の解析が必要となり、またマウス腸管線維化の治療実験など多めの実験マウスの維持管理が必要となる。3) 情報収集および成果発表のための旅費:本研究に関する情報収集および成果発表のための旅費が必要になる。
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