• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2023 年度 実施状況報告書

バレット食道と好酸球性食道炎の病態形成に関わる相互作用の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K08056
研究機関島根大学

研究代表者

石村 典久  島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 准教授 (40346383)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
キーワードバレット食道 / 好酸球性食道炎 / 胃食道逆流症 / 相互作用
研究実績の概要

酸関連疾患であるバレット食道と好酸球性食道炎は胃食道逆流(GERD)を背景に発症するが、両疾患の合併は稀である。今回の検討では、お互いの病態が抑制的に作用しているとの仮説を立て研究を計画した。今年度は以下の検討を行った。
1.好酸球性食道炎およびバレット食道の臨床像および臨床サンプルを用いた検討
①臨床像の検討:患者群[好酸球性食道炎:A群、バレット食道(好酸球性食道炎の合併例を除く):B群]および対照群(GERD(粘膜傷害あり):C群、健常者:D群)について、症例の集積を行い、各群5~16例について登録した。1cm以上のバレット食道の形成はA群で低い傾向を認めた。BMIや腹囲についてはD群よりもA-C群で大きい傾向が認められたが、A-C群の中では有意な差は認めなかった。アレルギー疾患の合併はA群で有意に高かった。②臨床検体を用いた検討:末梢血好酸球数およびIgE値はA群で有意に上昇を認めた。組織における好酸球浸潤はA群で有意に認め、免疫染色ではepidermal differential complex(EDC)蛋白の低下が特徴的であったが、B群では組織における好酸球浸潤は認められず、EDCの有意な低下は認めなかった。
2. バレット食道形成におけるアレルギー因子の関与に関する検討
食道扁平上皮株(Het-1A)およびバレット食道細胞株(BAR-T, BAR-10T)を準備し、IL-13関連遺伝子プロファイル(IL-13, IL-5, TSLP, eotaxin-3など)について評価を行っている。IL-13関連因子の発現は食道扁平上皮株とバレット食道細胞株において有意な差は認めなかった。また、IL-13(100ng/mL)投与によるeotaxin-3の発現について、バレット食道細胞株では扁平上皮株に比して発現が低い結果であった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

好酸球性食道炎とバレット食道の臨床像の評価について、4群に分けて、各20症例を予定しているが、バイアスを小さくするために、男性でH. pylori未感染例に限定している。原因は不明であるが、コロナ禍以降で、好酸球性食道炎の症例が大きく減少しており(他施設でも報告あり)、症例集積が目標に到達していないため、今後も集積が必要である。症例の集積・臨床像の検討と並行して、培養細胞を用いた基礎的検討も進めていく。培養細胞のコンディションもやや安定しない状況であったが、培養液の調節によって安定している状況となっている。臨床的検討について、予定数に達しない場合においても、得られた症例を用いて統計学的な解析を進めていく。

今後の研究の推進方策

1.好酸球性食道炎およびバレット食道の臨床像および臨床サンプルを用いた検討
①臨床像の検討:引き続き、症例の集積を進めていく。身長、体重、BMI、腹囲、アレルギー疾患の併存、同胞内のアレルギー疾患の有無、生活歴(飲酒・喫煙)、内視鏡所見などの臨床情報について、統計学的な評価を行い、好酸球性食道炎とバレット食道の臨床像の差を明らかにする。②臨床検体を用いた検討:血液検体および組織検体を用いたIL-13関連因子(IL-13,IL-5,TSLP, eotaxin-3)、バリア機能に関連するEDC蛋白の発現などについて免疫組織学的検討およびmRNA発現解析(定量PCR)を行い好酸球性食道炎とバレット食道の発現の差から病態の解析を行う。さらにバレット食道形成に関連するCdx-2、Notchシグナル関連因子(Notch-1、Hes-1、ATOH1)の発現についても同様に解析を行う。
2.バレット食道形成おけるアレルギー因子の関与に関する検討
食道扁平上皮細胞株(Het-1A)およびバレット食道細胞株(CP-A、BAR-T、BAR-10T)を用いた基礎的検討を継続して行う。各培養細胞株におけるIL-13関連遺伝子プロファイルについて定量PCRで評価を行い、大きな差はないことが示されたため、リコンビナントIL-13の投与によって培養細胞から発現するeotaxin-3やEDC蛋白の発現を評価し、反応の差を明らかにする。さらに、酸および胆汁酸曝露をした際のCdx2プロモーター活性の変化やIL-13関連遺伝子の発現を確認する。これらの結果を総合して、胃食道逆流を背景とする好酸球性食道炎とバレット食道の形成に与えるメカニズムについてアレルギー性炎症と胆汁酸による影響から考察する。

次年度使用額が生じた理由

臨床的検討における各群の症例登録が予定数よりも少なかったため、臨床検体を用いた免疫染色や分子生物学的解析用の試薬の購入が当初計画よりも少なくなった。これらの解析および培養細胞を用いた検討は引き続いて次年度に行う予定であり、そのために次年度使用額が生じた。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] IBD鑑別疾患としての好酸球性胃腸炎2024

    • 著者名/発表者名
      三島義之、石村典久、石原俊治
    • 雑誌名

      IBD Research

      巻: 18 ページ: 50~56

  • [雑誌論文] Buried Barrett粘膜から発生したBarrett食道腺癌の1例2024

    • 著者名/発表者名
      岸本健一、石村典久、石原俊治、他
    • 雑誌名

      胃と腸

      巻: 59 ページ: 387~399

  • [雑誌論文] 診療に役立つ内視鏡分類2024 好酸球性消化管疾患2024

    • 著者名/発表者名
      石村典久
    • 雑誌名

      消化器内視鏡

      巻: 36 ページ: 42~47

  • [雑誌論文] Clinicopathologic differences of gastric neoplasms between Helicobacter pylori-infected and -na?ve patients: a multicenter retrospective analysis2023

    • 著者名/発表者名
      Kotani Satoshi、Ishimura Norihisa、Ishihara Shunji、et al
    • 雑誌名

      Journal of Gastroenterology

      巻: 59 ページ: 1~10

    • DOI

      10.1007/s00535-023-02050-2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 好酸球性食道炎と酸分泌抑制薬2023

    • 著者名/発表者名
      石村典久
    • 雑誌名

      Medical Practice

      巻: 40 ページ: 1456~1458

  • [雑誌論文] GERDの内科的治療2023

    • 著者名/発表者名
      石村典久
    • 雑誌名

      臨床消化器内科

      巻: 38 ページ: 1149~1157

  • [雑誌論文] 好酸球性消化管疾患 病態と臨床経過2023

    • 著者名/発表者名
      石村典久、石原俊治
    • 雑誌名

      臨床消化器内科

      巻: 38 ページ: 640~646

  • [学会発表] Genome-wide association analysis of eosinophilic gastrointestinal diseases in Japanese adults2023

    • 著者名/発表者名
      Ishimura Norihisa、Fujiwara Yasuhiro、Matsuda Fumihiko
    • 学会等名
      第65回日本消化器病学会大会
  • [学会発表] 食道良性疾患の最新情報2023

    • 著者名/発表者名
      石村典久
    • 学会等名
      日本消化器病学会第38回中国支部教育講演会

URL: 

公開日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi