研究課題/領域番号 |
22K08062
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
加川 建弘 東海大学, 医学部, 教授 (30245469)
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研究分担者 |
紙谷 聡英 東海大学, 医学部, 准教授 (30321904)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 胆汁うっ滞 / 進行性家族性肝内胆汁うっ滞症 / ゲノム編集 / 胆汁酸 / ノックアウトマウス |
研究実績の概要 |
進行性家族性肝内胆汁うっ滞症(Progressive Familial Intrahepatic Cholestasis、PFIC)は小児期に肝不全となり、肝移植を必要とする進行性かつ重篤な疾患である。従来から、血清γ-GTPが上昇しないPFIC1、PFIC2とγ-GTPが上昇するPFIC3の3型が知られていた。PFIC1はphosphatidylserine flippaseであるATP8B1、PFIC2は胆汁酸トランスポーターであるABCB11、PFIC3はphosphatidylcholineトランスポーターであるABCB4の遺伝子異常で発症する。PFIC1,2,3に加えて、TJP2、NR1H4、MYO5Bの遺伝子異常で肝内胆汁うっ滞が発症することが報告されており、それぞれPFIC4, 5, 6と呼ばれている。PFICは重篤な疾患であるにも関わらず、発症機序の解明や治療薬の開発は進んでいない。その最大の原因はモデル動物の欠如である。マウスやラットの胆汁酸はミュリコール酸など親水性の胆汁酸が多く、細胞障害性が少ないため、PFICの原因遺伝子をノックアウトしても、肝障害を生じない。本研究ではミュリコール酸合成に関与する2つの酵素をダブルノックアウトしたヒト型胆汁酸マウスを用いて、さらにゲノム編集技術を用いてPFIC原因遺伝子をノックアウトしたトリプルノックアウトマウスを作製した。令和4年度はABCB11, ABCB4, NR1H4をノックアウトし、その表現型を解析した。いずれも肝障害を発症したが、ABCB4ノックアウトマウスの肝障害が最も顕著であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
6つの遺伝子のうち、ABCB11, ABCB4, NR1H4の3つの遺伝子に対し、エクソンのコーディング領域を標的とするgRNAを設計した。設計したgRNAがヒトU6プロモーター下で発現するAAVベクターを作製し、293T細胞に遺伝子導入することで、成体マウス感染用のAAVを精製した。また、SaCas9タンパク質を肝特異的プロモーター制御下に発現するAAVについても同様に精製した。これらのAAVをヒト型胆汁酸マウスの腹腔にinjectionし、目的の蛋白の発現が肝臓で欠損していることを確認した。表現型としては、ABCB4ノックアウトでは顕著な肝障害が出現し、ヒトPFIC3の表現型と類似していた。ABCB11ノックアウトにおいては肝障害が比較的軽度、NR1H4ノックアウトでは中途度の肝障害が見られた。今後、これらの表現型の違い、ヒトPFICとの違いについて解析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度に作成した3つのノックアウトマウスについては、肝内胆汁酸組成解析、肝のメタボローム解析やマイクロアレイ解析を行なって、肝障害機序について解析を進める。また、残り3つの遺伝子についても順次AAVベクターを用いたゲノム編集によりノックアウトマウスを作製し、表現型を解析していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
交付前に準備していた消耗品を使用することができたため、令和4年度は予定より少ない金額で研究を遂行することが可能であった。 令和5年度は令和5年度の交付額1690000円と繰越金872,412円を合わせた2562412円を消耗品に使用する予定である。
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