研究課題/領域番号 |
22K08064
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
中野 春男 東京薬科大学, 生命科学部, 助教 (60601870)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 2型免疫応答 / 腸刷子細胞 / ストレス応答 / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
2型自然リンパ球が関わる2型免疫応答は、寄生虫に対する生体防御反応である一方、アレルギー疾患の主因でもあり、その制御機構の解明は急務である。申請者は、感染寄生虫を認識し2型免疫応答を惹起する腸刷子細胞を制御する新規因子として ATF5 遺伝子に注目し、腸刷子細胞の分化に関わる ATF5 の標的遺伝子や作用機序を明らかにすることを目的としている。 本年度は、2型免疫応答時に ATF5 欠損小腸において過剰増加する腸刷子細胞の性質を明らかにすることを目的とした。寄生虫の代謝産物(コハク酸)溶液を野生型、ATF5 欠損型マウスに飲水させて2型免疫応答を惹起させたのち、小腸組織を採材し、組織学、及び分子生物学的解析に供した。2型免疫応答時の ATF5 欠損型小腸における腸刷子細胞数は、野生型に比べて約3倍増加した。腸刷子細胞は、神経細胞様の性質を持つ Tuft-1 型と免疫細胞様の性質を持つ Tuft-2 型に大きく分類されるが、定量 PCR 解析の結果、ATF5 欠損型で過剰増加する腸刷子細胞はSpib 転写因子を発現する Tuft-2 型の細胞であった。 次に、野生型マウス、及び ATF5 欠損型マウスの腸陰窩より腸オルガノイド培養系を確立した。高用量(10 ng/ml)、及び低用量(2 ng/ml)の IL-13 サイトカイン刺激による腸刷子細胞の分化誘導実験を行ったところ、高用量の IL-13 刺激では野生型、ATF5 欠損型の腸オルガノイドにおける腸刷子細胞の分化が同程度生じたが、低用量の IL-13 刺激では野生型に比べ ATF5 欠損型の腸オルガノイドにおいて腸刷子細胞の分化が過度に生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
やや遅れている理由は次の通りである。 令和4年度に条件的 ATF5 欠損マウスを作製すべく、CRISPR/Cas9 ゲノム編集による ATF5 遺伝子への loxP 配列挿入に必要なガイド RNA の選抜を培養細胞で実施したが、高活性のガイド RNA が得られなかったため、マウスを用いたゲノム編集実験が実施できていない。
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今後の研究の推進方策 |
条件的 ATF5 欠損マウスの作製:腸管における腸刷子細胞の分化における ATF5 機能を詳細に検討する目的で、Cre-lox 系より臓器及び時期特異的に ATF5 を欠損するマウスを作製し実験に供する。具体的には、卵管内受精卵エレクトロポレーション法を用いた CRISPR/Cas9ゲノム編集(i-GONAD法)によって、ATF5 遺伝子のアミノ酸コード領域を含むエクソン2の上流と下流のイントロンにそれぞれ loxP 配列を挿入した遺伝子改変マウスを作製する。 腸刷子細胞における ATF5 の転写標的遺伝子の探索:腸刷子細胞の分化に関わる転写因子ATF5 の標的遺伝子を明らかにすることを目的に、単離した腸上皮細胞を用いたクロマチン免疫沈降実験を行う。腸刷子細胞の分化誘導性サイトカイン IL-13 を刺激した野生型、ATF5 欠損型腸オルガノイドより RNA を調整し、RNA-seq による網羅的な遺伝子発現解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由:令和4年度に条件的ATF5欠損マウスを作製すべく、CRISPR/Cas9ゲノム編集によるATF5遺伝子へのloxp配列挿入に必要なガイドRNAの選抜を培養細胞で実施したが、高活性のガイドRNAが得られなかったため、マウスを用いたゲノム編集実験が実施できていない。 次年度使用額の使用計画:培養細胞でのゲノム編集によるガイドRNA選定後、マウス個体の実験に必要なゲノム編集用の核酸、試薬を購入する予定である。
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