研究実績の概要 |
TGF-βの活性化は肝線維化や肝がんの進行に関与しており、この活性化機構を解明することが重要である。我々は初期の肝線維化においてセリンプロテアーゼである血漿カリクレイン(PLK)によるTGF-β前駆体であるLAPの切断がTGF-β1の活性化を誘導することを見出している。しかしながらPLK依存的なTGF-β1活性化がどの様に肝線維化に関与しているのか明らかとなっていない。そこで当課題ではPLKによるLAP切断部位Arg58, Leu59に変異を導入し切断できない配列を持つノックインマウスをライン化し、肝線維化モデルを作製し、ノックインマウスと野生型マウスを比較することによりPLK依存的なTGF-β1活性化の役割を明らかにすることを目的として研究を行った。 CRISPR/Cas9システムを用いて、TGF-β1 LAPの血漿カリクレイン切断サイトであるArg58, Leu59から、切断できないAla58, Ala59をコードする遺伝子配列に組換えたノックインマウスを作製し、変異の生殖系列への移行を確認した。このマウスのライン化を実施した。このTGF-β1ノックインマウスと野生型マウスを用いて胆管結紮による肝線維化モデルを作製し、胆管結紮(BDL)3日後と13日後に血漿中のALTとAST量とLAP-D量を測定した。肝切片を作製し、シリウスレッド染色を行い肝線維化領域を染色した。野生型マウスの血漿中ではBDL後13日目でLAP-Dの上昇が見られたが、ノックインマウスの血漿中で検出できなかった。また、血漿中のALT, ASTが野生型マウスと比較してノックインマウスではBDL後13日目で有意に抑制されたが、3日目では抑制されなかった。肝切片をシリウスレッド染色した結果、BDL後13日目で野生型マウスと比較してノックインマウスでは肝線維化が抑制される傾向があった。
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