研究課題/領域番号 |
22K08072
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
福田 邦明 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50447257)
|
研究分担者 |
岡田 浩介 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (80757526)
土屋 輝一郎 筑波大学, 医学医療系, 教授 (40376786)
有泉 俊一 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (40277158)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | p62 / NASH / 肝炎症 / 肝線維化 / 遺伝子改変マウス |
研究実績の概要 |
p62がNASH発症進展において果たす役割を明らかにするために,野生型マウス(WT),全身p62遺伝子欠失マウス(p62-KO),p62が肝細胞でのみ特異的に欠失する肝細胞特異的p62欠失マウス(p62-H cKO),更に,p62が肝細胞にのみ特異的に発現する(レスキューされる)肝細胞特異的p62レスキューマウス(p62-H res)に,60%高脂肪食(オリエンタル酵母)を32週間摂餌させ,NASH重症度を肝病理(steatosis, activity, fibrosis score; SAF score),血液生化学検査,肝組織のqPCRにより評価した.p62-KOとp62-H resは,WTとp62-H cKOと比較して高度の肥満を呈した.一方,p62-KOとp62-H res,WTとp62-H cKOとの間では差はなかった.しかし興味深いことに,WTと比較して,p62-H cKOとp62-KOでは高度の炎症線維化を伴う重症NASHへ進展したが,p62-H resでは,これらの肝炎症,肝線維化が抑制され,NASHの進行が軽減していた.これらの結果から,肝細胞のp62がNASH進行に防御的に機能していることが明らかとなった. 培養肝細胞(Hepa1-6)を用いた解析では,PL,OLいずれの脂肪酸の暴露によっても野生型細胞(WT)ではp62タンパク発現の増加が認められた.また,WTと比較してp62をノックアウトした細胞(p62-KO)では,lipophagyに関わるLC3の基礎発現が増加し,更にPLおよびOLの暴露によるLC3発現の増加が顕著であり,p62の欠失によりautophagy/lipophagyの障害が惹起されている可能性が示唆された.一方,脂肪酸代謝に関わるFAS,PPARα,PPARγなどの発現は,両者で大きな差を認めなかった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変動物の実験は,動物の繁殖・供給はほぼ計画通りに進行し,高脂肪食の摂餌も終了した.NASHのphenotypeの変化については,肝病理,血液生化学,肝組織のqPCRなど順調に解析が終了している.現在,肝組織の脂肪酸代謝に関わる遺伝子発現を網羅的に解析するため,RNA-seq解析をタカラバイオ社に委託して行っている. 細胞実験については,CRISPR/CAS9を用いてp62をノックダウンした培養幹細胞を作成し,実験に供した.これらの細胞を用いてautophagy/lipophagyに関わる因子の発現と,脂肪酸の暴露による変化を解析した.実験条件を確定し,実験計を構築することに成功した. ヒト肝臓標本を用いた研究では,p62の免疫組織学的解析がほぼ完了した.臨床情報の収集も終了した.現在,autophagy/lipophagy関連因子であるLC3Aについて免疫組織学的な解析を行っている.
|
今後の研究の推進方策 |
動物実験については,今後,RNA-seqによる遺伝子発現の網羅的解析を予定している.また,脂肪酸代謝の代謝産物に着目して,高速クロマトグラフィによるメタボローム解析を行う予定である. 細胞実験については,p62の遺伝子発現の差によって生じたautophagy/lipophagyに関与する因子の変化が,脂肪酸代謝とどのように関与しているのか,特に小胞体ストレスとそれによって生じる異常タンパクの消去との関与に着目して研究を継続する. ヒト肝臓標本を用いた研究では,今後P62とLC3Aの関連に着目した解析,更に,autophagyと並んでタンパク分解に関与するmulti-ubiquitinなどに着目して免疫組織学的解析を追加し,更なる解析を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
ミトコンドリア機能解析などの細胞実験について研究に多少の遅れが出たため,2022年度には予定されていた物品を購入・使用することができなかった.このため,2023年度に細胞実験のための細胞培養消耗品,解析消耗品に充てる計画である.
|